事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その136「作家刑事 毒島の嘲笑」中山七里著 幻冬舎

2023-07-14 | 日本の警察

その135「リバー」はこちら

いろいろとあったけれども刑事技術指導員として警視庁捜査一課に在籍する人気作家……まあ大嘘の設定ではあるけれども、中山七里の本音をぶちかませる格好の入れ物になっている。

今回はテロリストとの戦いがメイン。保守にしろ、リベラルにしろ、うすっぺらい政治性を嘲笑してみせる毒島がいなせだ。よく考えたらこの人は、史上最強の評論家なのかもしれない。

その137「暮鐘 東京湾臨海署安積班」につづく

 

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日本の警察 その135「リバー」奥田英朗著 集英社

2023-05-20 | 日本の警察

その134「教場X」はこちら

群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見される。十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。
十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか───

オリンピックの身代金」「罪の轍」につづいて奥田英朗がかっとばしたホームラン。圧倒的な面白さ。圧倒的な犯罪小説。600ページ超の大作がすこしも飽きさせない。

北関東を流れる渡良瀬川の河川敷。二人の女性が殺害される。十年前の事件との相似に栃木、群馬の両県警は色めき立つ。同一犯の連続殺人だとすれば、迷宮入りに終わった十年前のリベンジができる。

容疑者は3人

1人目は破滅的かつ加虐的なサイコパス。

2人目は多重人格の少年。ひとつの人格が暴力的。

3人目は寡黙な大男。十年前にこの地方にいたことが判明する。

刑事や被害者、容疑者たちにからむ女性たちも含めてキャラ立ちまくり。終盤が駆け足に見えるのを批判する向きもあるようだが、すべてを説明しないで読者に余韻を感じさせる、奥田のいつもの手法じゃないですか。

酷暑の描写と、流入する外国人の描き方など、さすが北関東のお話。傑作。

その136「作家刑事 毒島の嘲笑」につづく

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日本の警察 その134「教場X」長岡弘樹著 小学館

2022-09-28 | 日本の警察

その133「機龍警察 白骨街道」はこちら

教場シリーズ最新作。といってもまだ風間が警察学校に赴任する前のお話。指導官として若手の刑事をみちびく連作集。この設定はよく考えてあるなあ。これなら、所轄にこだわらずどんな事件にも風間を關係させることができる。時系列は

「教場0」

「教場X」

「教場」

「教場2」

「風間教場」

のようです。違ったっけ?ちょっとひねりすぎのような短編もあるけれども、とにかく読ませます。風間の顔が初めて表紙に描かれ、どこかで観たことがある人にそっくり(笑)

その135「リバー」につづく

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日本の警察 その133「機龍警察 白骨街道」月村良衛著 早川書房

2022-09-23 | 日本の警察

その132「隠蔽捜査9 探花」はこちら

ミャンマーという国がよく理解できない。いやもちろん存在としてのアウンサンスーチーとかロヒンギャとかは認識していても、あの国がどのようにして情勢が二転三転しているのか、さっぱりわからないのだ。理解が「ビルマの竪琴」レベルで止まってしまっている。

月村良衛は機龍警察シリーズの新作の舞台にミャンマーを選んだ。特捜部長の沖津は、警視庁の傭兵(これって会計年度任用職員ってこと?)である姿、ライザ、オズノフの三名を、指名手配犯の身柄を引き取るために派遣した。

どう考えても成功するはずのない作戦。しかも、ミャンマーに行くということは、彼らが機龍=ドラグーンに騎乗できないのだ。

現実のほうもこの小説とシンクロしはじめ、雑誌連載中に軍事クーデターが勃発。頭をかかえた月村は、しかしこの状況をすら巻き込んで豪胆に突き進む。

白骨街道とは、第二次世界大戦におけるビルマ戦線で行われたインパール作戦(日本軍にとって史上最悪の作戦として知られる)のため、日本兵が死屍累々と連なる道のこと。陸軍の無責任体質の象徴であり、月村は現在の日本も、同様の道を進んでいると感じることからこの名をつけたそうだ。

威勢のいいことばかり言い連ねた元首相の死にざま、多くの借金をのちの世代に押しつける経済政策、金まみれの五輪……確かにこの作品のキャッチコピーである

「日本はもう終わっているのか?」

を実感。ミャンマーも腐っているが、日本もまた。

しかし特捜部のメンバーたちは、そのことに抗っている。抗い続けている。メカの動きの描写からは、機械油の匂いまで立ちのぼるかのよう。傑作だ。

その134「教場X」につづく

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日本の警察 その132「隠蔽捜査9 探花」

2022-09-07 | 日本の警察

その131「ビター・ブラッド」はこちら

科挙においてトップの成績の者は状元、第2位及第者が榜眼、そして第3位が探花(たんか)。なんと同期のなかであの竜崎は第3位で、私大出身の伊丹が2位の成績だったとか。もちろん竜崎はそんなことを微塵も気にしないが、状元である八島という人物が福岡から異動してきて……

竜崎が転勤して2作目。神奈川県警と警視庁の違いが興味深い。海というものを常に意識している、米軍という存在が常にストレスになっているなど、お勉強になります。

わたしの娘は横須賀に住んでいたし、卒業式のあとは横浜の港を妻と散策。これが水上警察かあ、おおこれって「あぶない刑事」の舞台じゃないの、銀星会出てこないかしら……

とりあえず、警視庁と神奈川県警はやっぱり仲悪いみたいです。犯罪者諸君、やるなら町田や狛江だ。

その133「機龍警察 白骨街道」につづく

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日本の警察 その131「ビター・ブラッド〜最悪で最強の親子刑事〜」(2014 フジテレビ)

2022-04-07 | 日本の警察

その130「ドクター・デスの遺産」はこちら

雫井脩介(同じ大学の同じ学部の出身です)の原作をドラマ化。いやーいかにもフジテレビなドラマになっている。

いくら離れてからだいぶ経つとはいえ、父親(渡部篤郎)と息子(佐藤健)がバディを組むってありえないし、おいおいなんで捜査一課がこんな事件に乗り出すんだとか、普通こういうときは携帯を使うでしょ!と毎回ツッコミながら見ていた。

ただし刑事ドラマ好きとしては

・チームのみんながあだ名で呼び合う→「太陽にほえろ!

・やけにおしゃれなファッションに身を包んでキザなセリフを→「あぶない刑事

……なんて形で楽しむことはできる。あ、どっちも日テレだった。

しかしこのドラマはやはり佐藤健のものだろう。彼のまわりだけ、違う空気が流れているような気がする。彼のまわりだけ、空気が澄んでいるみたいです。

その132「隠蔽捜査9 探花」につづく

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日本の警察その130「ドクター・デスの遺産」The legacy of Dr. Death (2020 WB)

2022-03-22 | 日本の警察

その129「偽装同盟」はこちら

中山七里の、犬養隼人と高千穂明日香のツンデレコンビの同題のミステリが原作。テーマは明確に安楽死。死を目前にし、苦痛にあえぐ人間に安らかな死を与える(塩化カリウムを注射する)行為は犯罪として糾弾されるべきなのか。

中山原作だから、あっと驚く仕掛けがラストに仕込んであるのだが、映画では早々にそれは明かされている。メディアが違うから仕方のないことかもしれないが……

犬養を演じたのは綾野剛(ちょっとイメージ違うと思った)。高千穂は北川景子(こちらはなかなか)。他に柄本明、木村佳乃など。ワーナーはシリーズ化をもくろんだはずだが、ちょっとそれきついかも。

その131「ビター・ブラッド」につづく

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日本の警察 その129「偽装同盟」佐々木譲著 集英社

2022-03-03 | 日本の警察

その128「MIU404」はこちら

わたしのマイベストミステリ2020に輝いた(誰もうれしくはないでしょうが)「抵抗都市」の続篇。

日露戦争において日本が敗れ、二帝同盟という名のもとにロシアの属国となっている歴史改変もの。

外交権すら奪われた日本国民の屈託が、主人公の刑事が逮捕した犯人をロシア側に渡さざるを得ない状況によって象徴されている。

前作との違いは、ロシアの側も革命の予感のためにガタついていること。そして日露両国のありようが、犯罪捜査とシンクロしているあたり、うまい。国家も、警察もその同盟はあやふやなのである。

地理や乗り物に徹底してこだわった(本郷通りはクロポトキン通りという名になっている)あたりも味わい深い。ウクライナ情勢とのあまりのシンクロぶりは、佐々木さんも予想できなかっただろう。

その130「ドクター・デスの遺産」につづく

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日本の警察 その128 「MIU404」(2020 TBS)

2022-02-22 | 日本の警察

その127「琉球警察」はこちら

野木亜紀子さん関連でレンタル。製作=脚本=演出のほとんどが女性で、「アンナチュラル」のチームが再結集。どストレートな刑事ドラマを志向したとか。

男2人のバディ刑事ものとくれば、松田優作と中村雅俊の文学座コンビの「俺たちの勲章」とか、やはり外せない舘ひろしと柴田恭兵の「あぶない刑事」などの日テレのドラマが思い出される。高山と大下はまだ日産レパードに乗って銀星会を追っかけてるのかなあ。

さて、このTBSドラマに起用されたのは綾野剛星野源。片っ方がクールで片っ方がお調子者とくれば、当然綾野がクールで星野がちゃらい方面を受け持つと考える。でも制作側は逆のキャスティングを行った。ちょっと無理目かなあと思ったけれど、次第になじんでくる。

MIUとはMobile Investigative Unitの略。機動捜査隊のこと。これはめずらしい設定だ。

普通の刑事ドラマなら、まず殺人などの事件が起こり、立ち入り禁止のテープをくぐっておっとり刀で登場する捜査一課の刑事が主人公であることが多い。

でも現実の捜査は違う。現場にまず駆けつけるのは機捜と略される機動捜査隊なのだ。捜査が長引きそうになると一課なりに引き継がれるのが通例。だから綾野剛と星野源は解決のために走り回る。野木亜紀子脚本は周到です。

主演のふたりや、女性上司の麻生久美子、チームの先輩である橋本じゅん、警察OBの小日向文世などにはそれぞれしっかりしたバックストーリーがあり、やはり例によって泣かせてくれるのでした。

出色だったのは菅田将暉。陽気な悪役として激しく魅力的。うーん、いいドラマだった。確実にシーズン2はつくられるな。まあ、あぶない刑事ほど延々と続きはしないだろうけれども(笑)。

その129「偽装同盟」につづく

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日本の警察 その127「琉球警察」伊東潤著 角川春樹事務所

2021-10-15 | 日本の警察

その126「警視庁科学捜査官」はこちら

舞台は返還前の沖縄。主人公は公安警察。GHQの圧制と、沖縄のなかでも島のなかで差別があるとか(「沖縄やくざ戦争」でもそれって描かれてました)、ヒーローとしての瀬長亀次郎……これだけの設定でありながら、どうにもはずまない。題材に負けてしまったのだろうか。

明治以前を鳥瞰図的に描くことが伊東潤の得意技。戦後は未消化なままになってしまった。リベンジをお待ちしています。琉球警察と警視庁を並列するあたり、もっと面白くなりそうですもの。

その128「MIU404」につづく

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