事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その139「外事警察」(2009 NHK)「外事警察 その男に騙されるな」(2012 東映)

2023-09-21 | 日本の警察

その138「爆弾」はこちら

あれはなんのドラマの番宣だったんだろう。「ケイゾク」だったかな。ローカル局のために、オンエアする局ごとにCMを作成するパターンってあるじゃないですか。山形であれば「TUYで」とか。主演女優がせいいっぱいがんばっているのに、そばに立っている渡部篤郎は、よほど眠かったのであろう、もうろうとして今にも倒れそうだった。これ、放送事故じゃないかと思うようなレベル。プロ意識ないのか渡部!(笑)

しかし「外事警察」における渡部篤郎はプロ意識のかたまり。スパイ天国といわれる日本を、水際で守っている感じをうまく出していた。

外事警察……ソトゴトと呼ばれる彼らの捜査手法は、「協力者」という名の情報提供者を“運営”することだ。

しかしその協力者が暴走を始め、ソトゴトたちが翻弄されてしまい……しかしそう見えて実は、な展開はさすが古沢良太脚本だ。むやみに面白かったっす。確かに、その男に騙されるなだよな。あ、ちょっとネタバレ。“その男”とは誰かが最後に明かされる。そう来たかあ。

ソトゴトに尾野真千子片岡礼子、北見敏之、滝藤賢一渋川清彦山本浩司……渋いところをそろえたなあ。誰が裏切り者であってもおかしくない感じがいい。

協力者はドラマ版が石田ゆり子、映画では真木よう子とこれまたいい感じ。上司が石橋凌で、内閣官房長官が余貴美子。彼女のメイクが誰かをモデルにしているのがまるわかりで笑えました。

その140「香港警察東京分室」につづく

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その138「爆弾」呉勝浩著 講談社

2023-09-06 | 日本の警察

その137「暮鐘」はこちら

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。

「ここから三度、次は一時間後に爆発します」

警察は爆発を止めることができるのか。(講談社BOOK倶楽部)

……「このミステリーがすごい!2023年版」第1位を獲得した作品。わたしはこの人の江戸川乱歩賞受賞作品「道徳の時間」に懐疑的だったので、彼の作品を久しぶりに読む。

とてもよくできたお話だし、動画サイトの使い方も画期的だ。なにより、何を考えているのかわからない容疑者が、次第に魅力的に見えてくるあたりの仕掛けがすばらしい。

ただね、ないものねだりかもしれないけれど、結末はひねりすぎじゃないですか。

その139「外事警察」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その137「暮鐘 東京湾臨海署安積班」今野敏著 角川春樹事務所

2023-08-22 | 日本の警察

その136「作家刑事 毒島の嘲笑」はこちら

まったくいつものとおりの臨海署。安積班長は部下のことを意識しまくっています。こんな上司も怖い(笑)。ただ今回は海上保安庁との関係性などが語られて興味深かった。

あおり運転の加害者が、どうやって被害者の住所を探し当てたのか、的な粗さもあるけれど、それもやっぱり湾岸者。死体を裏の林に埋めたのに死体遺棄罪にならないのはなぜか、というクイズなども楽しめます。タイトルが内容にストレートにからんでくるのに注意。

その138「爆弾」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その136「作家刑事 毒島の嘲笑」中山七里著 幻冬舎

2023-07-14 | 日本の警察

その135「リバー」はこちら

いろいろとあったけれども刑事技術指導員として警視庁捜査一課に在籍する人気作家……まあ大嘘の設定ではあるけれども、中山七里の本音をぶちかませる格好の入れ物になっている。

今回はテロリストとの戦いがメイン。保守にしろ、リベラルにしろ、うすっぺらい政治性を嘲笑してみせる毒島がいなせだ。よく考えたらこの人は、史上最強の評論家なのかもしれない。

その137「暮鐘 東京湾臨海署安積班」につづく

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その135「リバー」奥田英朗著 集英社

2023-05-20 | 日本の警察

その134「教場X」はこちら

群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見される。十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。
十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか───

オリンピックの身代金」「罪の轍」につづいて奥田英朗がかっとばしたホームラン。圧倒的な面白さ。圧倒的な犯罪小説。600ページ超の大作がすこしも飽きさせない。

北関東を流れる渡良瀬川の河川敷。二人の女性が殺害される。十年前の事件との相似に栃木、群馬の両県警は色めき立つ。同一犯の連続殺人だとすれば、迷宮入りに終わった十年前のリベンジができる。

容疑者は3人

1人目は破滅的かつ加虐的なサイコパス。

2人目は多重人格の少年。ひとつの人格が暴力的。

3人目は寡黙な大男。十年前にこの地方にいたことが判明する。

刑事や被害者、容疑者たちにからむ女性たちも含めてキャラ立ちまくり。終盤が駆け足に見えるのを批判する向きもあるようだが、すべてを説明しないで読者に余韻を感じさせる、奥田のいつもの手法じゃないですか。

酷暑の描写と、流入する外国人の描き方など、さすが北関東のお話。傑作。

その136「作家刑事 毒島の嘲笑」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その134「教場X」長岡弘樹著 小学館

2022-09-28 | 日本の警察

その133「機龍警察 白骨街道」はこちら

教場シリーズ最新作。といってもまだ風間が警察学校に赴任する前のお話。指導官として若手の刑事をみちびく連作集。この設定はよく考えてあるなあ。これなら、所轄にこだわらずどんな事件にも風間を關係させることができる。時系列は

「教場0」

「教場X」

「教場」

「教場2」

「風間教場」

のようです。違ったっけ?ちょっとひねりすぎのような短編もあるけれども、とにかく読ませます。風間の顔が初めて表紙に描かれ、どこかで観たことがある人にそっくり(笑)

その135「リバー」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その133「機龍警察 白骨街道」月村良衛著 早川書房

2022-09-23 | 日本の警察

その132「隠蔽捜査9 探花」はこちら

ミャンマーという国がよく理解できない。いやもちろん存在としてのアウンサンスーチーとかロヒンギャとかは認識していても、あの国がどのようにして情勢が二転三転しているのか、さっぱりわからないのだ。理解が「ビルマの竪琴」レベルで止まってしまっている。

月村良衛は機龍警察シリーズの新作の舞台にミャンマーを選んだ。特捜部長の沖津は、警視庁の傭兵(これって会計年度任用職員ってこと?)である姿、ライザ、オズノフの三名を、指名手配犯の身柄を引き取るために派遣した。

どう考えても成功するはずのない作戦。しかも、ミャンマーに行くということは、彼らが機龍=ドラグーンに騎乗できないのだ。

現実のほうもこの小説とシンクロしはじめ、雑誌連載中に軍事クーデターが勃発。頭をかかえた月村は、しかしこの状況をすら巻き込んで豪胆に突き進む。

白骨街道とは、第二次世界大戦におけるビルマ戦線で行われたインパール作戦(日本軍にとって史上最悪の作戦として知られる)のため、日本兵が死屍累々と連なる道のこと。陸軍の無責任体質の象徴であり、月村は現在の日本も、同様の道を進んでいると感じることからこの名をつけたそうだ。

威勢のいいことばかり言い連ねた元首相の死にざま、多くの借金をのちの世代に押しつける経済政策、金まみれの五輪……確かにこの作品のキャッチコピーである

「日本はもう終わっているのか?」

を実感。ミャンマーも腐っているが、日本もまた。

しかし特捜部のメンバーたちは、そのことに抗っている。抗い続けている。メカの動きの描写からは、機械油の匂いまで立ちのぼるかのよう。傑作だ。

その134「教場X」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その132「隠蔽捜査9 探花」

2022-09-07 | 日本の警察

その131「ビター・ブラッド」はこちら

科挙においてトップの成績の者は状元、第2位及第者が榜眼、そして第3位が探花(たんか)。なんと同期のなかであの竜崎は第3位で、私大出身の伊丹が2位の成績だったとか。もちろん竜崎はそんなことを微塵も気にしないが、状元である八島という人物が福岡から異動してきて……

竜崎が転勤して2作目。神奈川県警と警視庁の違いが興味深い。海というものを常に意識している、米軍という存在が常にストレスになっているなど、お勉強になります。

わたしの娘は横須賀に住んでいたし、卒業式のあとは横浜の港を妻と散策。これが水上警察かあ、おおこれって「あぶない刑事」の舞台じゃないの、銀星会出てこないかしら……

とりあえず、警視庁と神奈川県警はやっぱり仲悪いみたいです。犯罪者諸君、やるなら町田や狛江だ。

その133「機龍警察 白骨街道」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察 その131「ビター・ブラッド〜最悪で最強の親子刑事〜」(2014 フジテレビ)

2022-04-07 | 日本の警察

その130「ドクター・デスの遺産」はこちら

雫井脩介(同じ大学の同じ学部の出身です)の原作をドラマ化。いやーいかにもフジテレビなドラマになっている。

いくら離れてからだいぶ経つとはいえ、父親(渡部篤郎)と息子(佐藤健)がバディを組むってありえないし、おいおいなんで捜査一課がこんな事件に乗り出すんだとか、普通こういうときは携帯を使うでしょ!と毎回ツッコミながら見ていた。

ただし刑事ドラマ好きとしては

・チームのみんながあだ名で呼び合う→「太陽にほえろ!

・やけにおしゃれなファッションに身を包んでキザなセリフを→「あぶない刑事

……なんて形で楽しむことはできる。あ、どっちも日テレだった。

しかしこのドラマはやはり佐藤健のものだろう。彼のまわりだけ、違う空気が流れているような気がする。彼のまわりだけ、空気が澄んでいるみたいです。

その132「隠蔽捜査9 探花」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の警察その130「ドクター・デスの遺産」The legacy of Dr. Death (2020 WB)

2022-03-22 | 日本の警察

その129「偽装同盟」はこちら

中山七里の、犬養隼人と高千穂明日香のツンデレコンビの同題のミステリが原作。テーマは明確に安楽死。死を目前にし、苦痛にあえぐ人間に安らかな死を与える(塩化カリウムを注射する)行為は犯罪として糾弾されるべきなのか。

中山原作だから、あっと驚く仕掛けがラストに仕込んであるのだが、映画では早々にそれは明かされている。メディアが違うから仕方のないことかもしれないが……

犬養を演じたのは綾野剛(ちょっとイメージ違うと思った)。高千穂は北川景子(こちらはなかなか)。他に柄本明、木村佳乃など。ワーナーはシリーズ化をもくろんだはずだが、ちょっとそれきついかも。

その131「ビター・ブラッド」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする