2009年。太陽の活動が活発化し、地球の核が熱せられた結果、3年後に世界は終わりを迎える―。この驚愕の事実をいち早く察知した地質学者エイドリアンは、すぐに米大統領主席補佐官に報告。やがて世界各国の首脳と一握りの富裕層にのみ事実が知らされ、人類を存続させる一大プロジェクトが極秘に開始される。そして2012年。売れない作家のジャクソンは、子供たちとキャンプにやってきたイエローストーン国立公園で、世界に滅亡が迫っていることを偶然知ってしまう…。
……「インデペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」「紀元前1万年」などでおなじみ、大作請負監督ローランド・エメリッヒ最新作。
ソニーが用意した製作費を「そんなにはいらない」と返上したコストパフォーマンス男の面目躍如。もんのすごい特撮が連続する。特にロサンゼルスが“溶けるように壊れていく”描写など、子どもは絶対に夢でうなされるぞ。
ストーリーがあまりにもシンプルなのは計算づくだろう。ほとんど「アルマゲドン」と「ポセイドン・アドベンチャー」の泣かせの場面をつないだような組み立ては(科学者のお父さんがミュージシャンという設定はよかった)、観客へのいいわけみたいなものだ。エメリッヒは「さーてどうやって世界をこわしてやろうかな」これだけが目的だったはず。
なにしろバチ当たりな映画なのである。バチカンではシスティナ礼拝堂の「天地創造図」(ミケランジェロ)が、ちょうどアダムとエホバの指先で切り裂かれ(神が人間を見捨てたという暗喩)、リオデジャネイロの巨大なキリスト像も崩壊する。ホワイトハウスは空母(その名もJFK→ケネディ)が押し寄せて破壊され、生き残りをかけて建造された方舟にはエア・フォース・ワン(大統領専用機)が激突する。ヨーロッパ人であるエメリッヒの邪悪な笑いが聞こえてくるようだ。
徹底した破壊のあとは、今度は創世記を描いてみせる。西暦が否定された世界では科学者エイドリアンと大統領の娘がアダムとイブになり、不和だったジャクソン(ジョン・キューザック)の家族が再生されてノアの一家となる。これ、ハリウッドのパターンだとアダムとイブが白人でノアが黒人というパターンだけれど、ひっくり返してみせているわけね。
そして最後に、人類はまたあそこからスタートすることを暗示させて映画は終わる。2時間38分の大騒ぎ。ひー疲れた。確かに『これは、映画か』は疑問かも。大画面で観ないとほとんど意味をなさない映画なのでお急ぎを。