久しぶりのリンカーン・ライムのシリーズであると同時に「青い虚空」以来のハッカーもの。
これまでに登場した犯人のなかで飛び抜けて卑怯。データを完全にあやつり、生体情報などで他人に罪を着せまくるのである。もう二度と顧客登録などという愚かなマネはすまいと痛感(データはじゃじゃ漏れ)。
原題はThe Broken Window。犯罪の背景となるデータ管理会社が窓から“観測する”こと以上に(実際のこの会社の中枢には小さな窓しかないのが皮肉)、犯罪を抑止するために、小さな窓の修繕から始めるという割れ窓(ブロークン・ウィンドウ)理論を借りている。
こんないいタイトルなのにボーン・コレクター的な邦題をつけなくてもいいのにな、と思ったらディーヴァーがわざわざ日本向けに提案してきたのだという。サービス満点である。人間にとって、いまやデータ=魂なのだという意味もこもっているので悪くない。ひょっとして第二候補だったのかも。
でもね、「ウォッチメイカー」(こちらも原題は「冷たい月」だった)との関連とか、あまりに盛りだくさんなのでちょっと胸焼け気味。サービスしすぎじゃないかなあ。