第22話「間違えられた男」はこちら。
視聴者は「古畑任三郎」に、いつものように血なまぐさい事件が起き、古畑が快刀乱麻に解決して犯人を仕留めることを望んでいる。でも作家としては(視聴率がうなぎのぼりだからこそ)それまでとは違うパターンで勝負したいとウズウズしているはず。
「ニューヨークでの出来事」は、前回につづいて変則的なつくりになっている。なにしろ今回犯人は“古畑に逮捕してほしがる”のだ。
舞台はニューヨークに向かう長距離バス。古畑と今泉は第一話「死者からの伝言」で中森明菜が演じた小石川ちなみの新居を訪れるため、アメリカに来ている(警視庁捜査一課はかなり暇らしい)。同じバスに乗っているもの憂げな日本人、のり子・ケンドール(鈴木保奈美)は、古畑が刑事であることを知り、からかうようにこう告げる。
のり子:わたし、やったことあるんですよ。完全犯罪。
彼女は作家である夫を、たい焼きのなかに毒を仕込ませて殺したという。しかし、同じたい焼きを食べた彼女は、毒の入った部分を夫に選択させる方法がなかったと判断され、無罪となっていた……
同じ罪状で二度訴追されることはないというダブル・ジョパディの原則がドラマ的に利用されている。三谷幸喜が、例によって敬愛するビリー・ワイルダーの某有名作品からいただいたわけ。
わたしは柴門ふみが苦手なものだから、あの「東京ラブストーリー」(フジ)を観ていないけれど、無邪気に“見えてしまう”帰国子女を演じた鈴木保奈美は、大物感すら漂っている。90年代の保奈美は絶好調だったなあ。
古畑は、そんな90年代のテレビが大好きだったようだ。
古畑:日本も、変わりましたよ。
のり子:何が?
古畑:新春スターかくし芸大会が生放送になりました。
なるほど。そりゃ確かに革命的な出来事だ。
第24話「しばしのお別れ」につづく。
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