「高瀬庄左衛門御留書」「黛家の兄弟」で一気に名をあげた砂原の連作集。
陰で“なんでも屋”と揶揄される初老の差配役、里村五郎兵衛。彼のもとには、若君がさらわれたといった大ごとから、いなくなった猫をさがすという小さなことまで持ちこまれる。要するに藩のトラブルバスターなのである。
前の二作とちがって筆致は穏やかでハートウォーミングな展開……かと思ったら終盤にひっくり返すあたりの呼吸がいい。
好きだったのは、なぜかすべての男たちがつきまとってくるという女性が、心の底から男に絶望している「滝夜叉」というお話。彼女をめぐって争いがたえない現状を、里村がどう始末するか。
シリーズ化もありそうだ。楽しみだな。
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