第十回「栄一、志士になる」はこちら。
子どものために風車(ふうしゃじゃないよ、かざぐるまだよ)をおみやげに買ってくる子煩悩な父親。と同時に異人を排斥するために横浜の居留地を焼き討ちにしようと画策する革命家。このふたつが同居していたのが渋沢栄一であることを描いた回。
残念なことに風車ははしかで亡くなった子の墓前で回り続けるし、焼き討ち計画はいかにも杜撰。無邪気に気勢を上げる彼らに、もちろん体制は目をつけている(一瞬だけピントが合う波岡一喜が不穏)。
はしかの伝染力は強烈で、現在猖獗を極めている疫病よりもはるかに被害は大きかった様子。ワクチンがなかった時代のことなので、接種が遅いと言っていられる現代はまだしも幸福なのかもしれない。ま、先進国のなかで接種率がダントツに最下位という現状はいかがなものかとも思うけれども。
「攘夷など詭弁だ」
慶喜の主張はまことにまっとうだ。しかしそのまっとうさがこの人の不幸でもあった。先が、見えすぎるのだろう。BSではこの番組のあとに勝海舟の父親のドラマ(「小吉の女房2」)が再放送されていて、勝小吉(古田新太)の放埒さが慶喜にあったらと思わされる。ま、それだと将軍になれるはずありませんね。
渋沢栄一が武蔵の出であることが幸いだったか不幸だったか。
勤王の思いを抱いた青年は全国に数多かったろう。でも長州や薩摩のように、痛い思いをしたために攘夷を唱えていることの愚にいち早く気づいた連中が革命の果実のほとんどをもぎとった。
しかし逆に、水戸天狗党の乱と距離を置くこともできたのである。歴史にイフはないけれども、もしも栄一が長州や水戸に生まれていたらどうなっていたことやら。
第十二回「栄一の旅立ち」につづく。
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