原作者として、自分の作品が宮藤官九郎のような“癖のつよい”脚本家に料理されるのはどんな気分なのだろう。テレビドラマ化と刊行をほぼ同時に行うというメディアミックスをかましているのだから東野圭吾も文句は言えないところだろうが、いやしかしかなり肌合いの違った作品になっている。
流星群の夜、両親を惨殺された三兄妹。自分たちが何もしていないのに「遺族」というカテゴリーに入れられてしまう無念さ。生活のために(結果的にそれは犯人を見つけ出すことにもつながるのだが)詐欺を行い、しかし心のどこかにやましさを隠しきれない善なる若者たち。そして時効直前に犯人と対決する夜、空には……
「今はディスカスで『流星の絆』借りてるんだ」
「クドカンですけど、話は暗いですから……“面白く”はないですよ」
オンエア時に観ていた読者から警告されたけれど、いやいや宮藤官九郎はとんでもない手腕で“面白く”見せてくれる。アレンジの手腕は「池袋ウエストゲートパーク」を上回るだろう。
詐欺の経過を《ドラマ内ドラマ》として独立させることで兄妹の悪徳を希釈させ、より青春ドラマらしさを加速させる。「Death Note」ではどうしようもなかった戸田恵梨香が意外な演技派ぶりを見せ、二宮和也の転調に負けていない。バナナマンの設楽統の味もいい。
チビTこと桐谷健太や尾身としのりなど、いつものクドカンファミリーが笑わせるのは当然としても、“千円の女”中島美嘉のはじけっぷりは現場の楽しさを物語る。なにより、こんなセリフがいままでテレビドラマで発せられたことがあったか。
「ほんとは助けてなんてほしくないけど、ひとりで生きたいけど、それじゃつらすぎるから助け合って生きてきたんだよ。あんたのせいで助け合ってんだよ!なんでそんなこともわかんないのっ?!」
(最終回、犯人と戸田恵梨香の会話)
真犯人の意外さは東野圭吾お得意のところだが、DVDに熱中するわたしに
「あらっ。まだこれ観てなかったの?うふふ、今この画面に犯人がいるのよ」
もっとも残虐な犯人はウチの奥さんかもしれません。
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