第31回「月の下で」はこちら。
今回のタイトルを「たがために」とみんなが読めるのは、あのヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」のおかげだと思う。で、あの名作をみんなが知っているのは、映画のおかげもあるはず。イングリット・バーグマンとゲイリー・クーパーのやりとりが今でも鮮烈だ。
Where do the noses go? I always wondered where the noses would go
「キスをするときに、鼻は邪魔にならないの?」
スペイン市民戦争の最中におけるやりとり。泣ける。んで、ご存じのように鼻は邪魔にならないです。あなた、なりました?ついでに言えば、あの和田誠さんは英語教師が原題の
For Whom the Bell Tolls
を
For Whom the Bell Rings
と語ったことでその教師への尊敬を一切失ったらしい。怖い怖い。
さて「光る君へ」だけど、読者として帝を想定して書き始めた「源氏物語」なのに、もう紫式部にとってそんなことはどうでもよくなっている。作家の業とはそんなものだという大石静さんの宣言だろうか。誰のためにでもない。自分のために書く。
陰陽師である安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が逝く。藤原道長に、これからの圧倒的な隆盛を予言して。
確かに、これから道長にはいいことばかりが起こる。欠けることもない月に自分をなぞらえるくらいに。
教室の後ろのほうに年表が貼ってあって、平安時代はやけに長い。400年ぐらい続いたのだから。ああ平安な時代だったんだろうなあと子どもたちは思う。わたしもそう思いました。しかしその内実はこのように政争の連続だったわけで……怖い怖い。
第33回「式部誕生」につづく。
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