「あきらめていただくしかありません。もともと通りすがりの人間です。お知り合いになれてこよなく仕合わせでしたが、わたしどもにその先はありません」
主人公は渡し船の船頭。しかしなにやらわけありの様子。何かを、待っているのだ。
彼がいったい何を待っているかは中盤まで明らかにされず、日々の生活の描写に終始する。ところが、これがいいんですなあ。
志水ハードボイルドのことだから当然主人公はやせ我慢をしている。しかし武家社会の終焉を予感するほどクレバーでもある。幕末という設定が絶妙。そのうえでなおかつ、上のようなセリフを吐くあたりの臭さが泣かせる。
もちろん奇跡のようにいい女たちが登場し、主人公は彼女たちのために意地を張り、何かを失い、そして何かを得る。渋い。
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