恩田陸って、読めばいつも面白いじゃないですか。「六番目の小夜子」「ドミノ」「ねじの回転」いつも堪能。でもどうも手に取りづらくもある。「夜のピクニック」が、わたし向きではなかったことが影響したかも。
で、「消滅」。読売新聞に連載されたたいそう分厚い本だけれど、空港に孤立する11人プラス1匹の犬、というダイ・ハードっぽい設定にひかれた。きっとそういうタイプの小説もきっちりこの人はしあげてくるんだろうなあ……
その予想はある程度当たり、ある程度はずれた。とにかく圧倒的に読ませる面白さは予想どおり。しかし大型台風と通信障害によって孤立した特定の人物と犬のサバイバル、という方面では全然なかった。
濃いキャラのなかにひとり、ロボット(というくくりは乱暴だけど)がいて、くわえて異能の持ち主が登場するからだ。そんな条件のなかにおける「このなかにひとり、犯人がいます」的なミステリ色強し。これはこれでけっこうでした。犯人じゃなくてテロリストという表現になっているのがラストで効いてきます。
タイトルの英題はVanishing Point。消滅点。いろんな意味がこめられているけれど、わたしの世代にはアメリカン・ニューシネマの傑作にして、タイトルのかっこよさナンバーワンだった「バニシングポイント」を想起させます。ほぼ同世代の恩田は絶対に意識したはず。
あの映画ではラストで主人公は文字通り消滅するんだけれど、こちらで消滅するのは……
空港、ヒューマノイド、国家規模のテロ、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジを連想させるキャラ。こんな大風呂敷を広げながら、オープニングとラストで語られるのは小さなラーメン屋。小憎らしいほどうまい。やはり、恩田陸はもっともっと読まなければならない作家のようです。
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