その1はこちら。
(ハンフリー・ボガートとの確執をきかれて)
「カメラマンが耳打ちした。『照明を何とかしなくちゃ。ボガートが喋るとつばが飛ぶんですよ。だから逆光のライトは当てられない。バックライトは致命的だ。』私はオードリー・ヘップバーンについている衣装係の女性に、常時タオルを用意しておくよう注意を促しただけ。ただしはたから気づかれないように。」
(スタンリー・キューブリックについて)
「すばらしい監督だと思う。でもときどき……どうにも理解しがたいのだが……『バリー・リンドン』だが、人工照明でなく、ろうそくの火で人物を撮るにはどうしたらいいかで六ヶ月も頭をしぼる。ろうそくの火だろうが何だろうが誰も気にかけやしないじゃないか。」
(オードリー・ヘップバーンその1)
「ひとを魅了せずにおかない人間でも、カメラにおさめると魅力がどこかにけし飛んでしまう。ヘップバーンにはカメラも奪えぬ何かがあった。そしてそれはふたつとないものだ。彼女は彼女の時代に永遠に存在する。スクリーンの彼女は実際の彼女とはまた全然別物だった。気品が欠落するのじゃない。気品はそのまま。そこに何か新しいもの、何か貴族的なものが加わる。最高にすばらしい。」
(オードリー・ヘップバーンその2)
「撮影所に顔を出したときには一頁半のシナリオしかなかった。それで丸一日の撮影に当てなければいけない。時間稼ぎをするしか手はない。そこでヘップバーンのところへ行き、打ち明けた。『セリフをとちってほしい。間違えてほしい。頼む。何とか助けてほしい。一頁半しか撮影するところがないんだ。』彼女は言った。『やってみるわ』そして、事実彼女はやってくれた。こう彼女は訴えた。『頭ががんがんするわ。すこし休ませて』そして15分、一時間と彼女は横になってくれて、おかげで一頁半のシナリオで6時まで何とかもたせることができた。あのとき、気むずかし屋と観られたかもしれないし、頭に穴があいていると噂をたてられても困っただろう。ところが、何も気にかけなかった。平気で私の願いを聞いてくれた。」
わたしはオードリー・ヘップバーンは知性と理性の人だと思っているけれど、それ以上に情の人だったのね。その3につづく。
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