保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

イワツツジとゴミ問題からの日本人を考える

2006-06-17 00:36:07 | 保津川エコ・グリーン委員会
この時期の保津川下りの名物は峡谷を彩るイワツツジだ。

だが、近年のガーデニングや盆栽ブームにより、峡谷に咲くイワツツジを
ハイカーやバーベキューに訪れた人がむしり取り持ち帰るという事態が
起こり、年々イワツツジの自生率が激減していきているのだ。

それでなくても、最近の河川水質の悪化で峡谷に自生する植物は
その生存の危機に瀕しているいうのに、まだ追い討ちを掛けるが
如くの人間の振る舞いは許し難いものがある。

保津川では天然記念物にも指定されているイワツツジを
を守っていくために、毎年、人工の補植作業を実施している。

補植作業は、保津川下りの船に市民ボランティアの方々が
乗り込み下りながら渓谷の岩壁数箇所に手作業で根付を施すもので
毎年約1,500本の岩つつじの苗を植えていく。

植付け方法は、持ち込んだつつじの苗を 土と水コケで包み、
生育に適した場所を慎重に選びながら一つ一つ丁寧に
岩の割れ目に植え付けいく。

これでも、根付くのは約2割だ。

でも、心無い人間によって荒らされた峡谷の景観を
守るためには貴重な活動の一つだと思っている。

イワツツジの根付作業と同時に保津川下りの船頭有志による
「保津川ハートクリーン作戦」も実施し、美しい河川景観を
自らの手で守る運動も継続している。



船が流れる航路のあちらこちらに捨てられてあるゴミ袋やペットボトル、
農業用肥料の袋。人の心の乱れがそのまま川の姿になって現れる。

ツツジにしても、ゴミにしても「自分ひとりくらいいいだろう」
「めんどくさい」「自分さえよければいい」という自己中心的思考に
もとづくモラルの欠如、甘えが、大勢の人々の心に広がることで起っている。

以前、読んだ本で江戸時代末期、日本を訪れた英国人が
この国の美しさを自国のマスコミに紹介した文面を見かけた。
その文には「この日本という国にはゴミ一つ落ちてないとても清潔な国で、
役人のサムライたちも誇り高い者ばかりでチップすら取らない」
と驚嘆し、最高に褒め称えていた。

それが今は、現在はどうだろう?

近代化が進み法治国家として確立してこの国は、その法を盾に
組織のリーダーが責任を取らなくてもいいシステムを生み出した。
法的に許されれば、裁判で勝てばそれでいい、その発想は世の中に
浸透し、ちっぽけなモラルなどその前では無力で吹っ飛ぶ。

特にバブル以降、放漫経営や市場ルール違反の責任を取らない上に
公的な資金で穴埋めしている厚顔な企業経営者たち、
国家財政を破綻させた責任を取ることなく、国民から税を絞り取る政治家と官僚達。
自らの目測甘さから政策を誤り地方財政を破綻させ羞じない首長たち。

社会の手本となる人達のモラルの低下は、庶民のモラルの低下を生む。

ゴミを捨てる者、自然を破壊する者、責任を取らない国のリーダーたち。
これらの人々の全て心の底には共通した卑しい精神的構造が明らかに見て取れる。

もしかしたら、偉そうにモラルを説く自分自身ですら、
このような現代社会の風潮を心の奥に潜ましているやもしれない。

イワツツジや川のゴミの現象も、常に自らを戒める‘心の鏡’として
映していかねばと気を引き締めるのである。