そろそろ展覧会を見ることすら辛くなってきた。何とか自分に鞭打って見る最後の展覧会は、東京都美術館の「ターナー展」である。以前、岡山で「ターナーとその仲間たち」…、じゃなくて「ターナーから印象派へ」を見たときは、ターナー作品は5点だったのだが、今回は100点以上、全部ターナーである。
最初の方はスケッチなのに大混雑で、少し飛ばし気味にして…
「バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨」:23歳時の作品。早くもドラマティック。
「スノードン山と深い谷、隊列を組んで進む軍隊」:朦朧体か。
「グリゾン州の雪崩」:エッジの効いたところと、雪の飛び散るモヤモヤを盛り込んだ作品。
「エジプトの第十の災い:初子の虐殺」:歴史スペクタクルである。
「ディドとアエネアス」:146cm×237.2cm。初めて見るターナーの大作。大スケールである。
「スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」:精密かつドラマティック。ある種のニュース映像のようだ。
「イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に」:国民画家だなあ~
「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ」:建物のせいか、ラファエロを意識したせいか、ローマっぽい。
「チャイルド・ハロルドの巡礼-イタリア」:デカく、正しい作品。
「海より望むフォークストン(版画集『海景』のための原画)」:自然にすら、ドラマを求めている気配。
「逆賊門、ロンドン塔(サミュエル・ロジャースの『詩集』のための挿絵」:可愛い色彩で宝の小箱のよう。
「ヴェネツィア、総督と海の結婚の儀式が行われているサン・マルコ広場」:人がもわもわに描かれている。だんだん速筆になってきたぞ。
「オラニエ公ヴィレム3世はオランダを発ち、荒海を越えて1688年11月4日にトーベイ上陸」:タイトルをこんなに詳しく書いておいて、実際には好天だった11月5日に上陸したらしい。波の盛り上がりというドラマの前には、史実すら曲げるのだ。
「海の惨事」:これはジェリコーの「メデューズ号の筏」にも似ているが、いわゆるターナーイメージの作品。
「荒れた海とイルカ」:これは未完作らしい。赤い色彩が目立つのだが、この先どうなったのか。
「ウォータールー橋上流のテムズ川」:煙突の煙がもくもくと上がっている。産業革命の頃なのだろうが、もしかするとターナーのもやもやは、大気汚染だったりして。
「戦争、流刑者とカサ貝」:ナポレオンを描いた作品だが、夕景が血を暗示している(予言ではなく、ナポレオンの死後に描かれた作品)。
「平和-水葬」:船が黒く、こちらも死を暗示している作品。
私が全般を通してターナーに抱いた印象は、細やかにも描けるしダイナミックにも描ける人。さすが国民画家ともいえるが、あんたは正しいよと揶揄したくなる気持ちもあり、という所か。
出口には「ターナー天気予報」があった。明日は晴れる模様。ちょっと笑える。