イローナは図書館の重いドアーを押した。本の匂いがした。イローナの好きな匂いだ。ロレンツォはいつものように本に埋もれていた。本の間からギョロ目をイローナに向けた。
「やあ、イローナ」
「ロレンツォ。楽譜を探しに来たの」
ロレンツォはイローナの差し出したメモを見る。
「形見の歌か、フランソワ・ヴィヨンだね」
イローナは真っ直ぐにロレンツォの目を見る。
「知らないわ。歌えたらいいけど」
ロレンツォは背中を向けてはしご段を上がりかけている。
「人が死んでも書物は残る。歌も残る。だが、イローナ。読む人間がいて初めて彼らは蘇る。歌う人間がいて、初めて彼らは蘇る。永遠の生を授かる。フランソワ・ヴィヨンはお前によって遠い昔から帰ってくる」
その時、書庫の方で小さな音がした。
「誰かいるの?」
イローナが尋ねた。
「いいや、誰もいない。私だけだよ」
ロレンツォは背中を向けたまま答えた。
「やあ、イローナ」
「ロレンツォ。楽譜を探しに来たの」
ロレンツォはイローナの差し出したメモを見る。
「形見の歌か、フランソワ・ヴィヨンだね」
イローナは真っ直ぐにロレンツォの目を見る。
「知らないわ。歌えたらいいけど」
ロレンツォは背中を向けてはしご段を上がりかけている。
「人が死んでも書物は残る。歌も残る。だが、イローナ。読む人間がいて初めて彼らは蘇る。歌う人間がいて、初めて彼らは蘇る。永遠の生を授かる。フランソワ・ヴィヨンはお前によって遠い昔から帰ってくる」
その時、書庫の方で小さな音がした。
「誰かいるの?」
イローナが尋ねた。
「いいや、誰もいない。私だけだよ」
ロレンツォは背中を向けたまま答えた。