つれづれなるままに

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映画「長い散歩」

2008年03月01日 | 芸能
               映画「長い散歩」

映画「長い散歩」を観てきました。
監督は、奥田瑛二。「少女」「るにん」に次いでの3作目の作品。
モントリオール世界映画祭のグランプリ受賞。
主演は、緒形拳。台詞は少ないが、顔の表情で演技をしているところが観ものである。
奥田瑛二監督は、緒形拳のために数年かけて企画を温め、実現した作品である。と語る。

安田松太郎(緒形拳)は、高校の校長を定年退職した厳格な教育者。
しかし、幸せな家庭は築けず、家を出てアパートに引っ越してくる。
アパートの隣室には、母親(高岡早紀)に虐待され、誰にも心を開けなくなった不幸な5歳の少女・幸(杉浦花菜)がいる。
幸はボール紙で作った擦り切れた羽根をいつも背中につけている。
初老の男・松太郎は、一人の地上の天使・幸と出会う。
松太郎は、幸を救い出し、一緒に旅に出る。
行く先は、松太郎の遠い記憶のなかにある心のユートピア。
青い空に白い雲がぽっかりと浮かび、大きな鳥が悠然と空を舞う、ある山の頂だった。
しかし、社会はそれを「誘拐」と呼んだ。

緒形拳の演技力は、さすがにいいものがある。
髪型を変えた白髪の姿がなんともいえない。
少女を追いかけて走る姿も初老の状況をリアルに表現している。
奥田瑛二監督の故郷である愛知県や馴染みの岐阜県がオールロケで撮影されている。
映像もとても美しく情景をふんだんに取り入れている。
早春の明宝スキー場をゆっくりと登っていく二人の姿は、日本人の持っている心の優しさや愛情が描き出されているとてもいいシーンのひとつである。

また、上尾張駅前でのラストシーンがいい。
松太郎がしゃがみ込んで嗚咽すると幸は覆いかぶさるようにして「泣かないで! 泣かないで!」と何回も叫ぶ。
朝の通学、通勤者が、初老の男と天使の少女を取り巻いて見守る。

(2007年1月8日記 池内和彦)
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