ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2012.3.21 2年ぶりの門出の日に

2012-03-21 23:10:07 | 日記
 今日は勤務する大学の卒業式・学位記授与式の日だ。
 春らしい色で出かけようと、昨晩のうちにクローゼットからのスプリングコートを出しておいたが、天気予報によると、今日は冷たい北風で2月下旬の陽気とのこと。それにめげて、いつもの通りのダウンコートにした。また風邪をひいてはたまらない。ブーツを脱いで、タイツとパンプスにしたことだけが春の装い。

 昨年は東日本大震災のため、卒業式・入学式とも中止となった。そして修了生の学位記は、事務室で事務職員が渡すだけの簡単なものとなった。

 一方、息子が通う学校では、高校の卒業式は震災前だったので恙無く執り行われたが、中学校は、震災翌日から約1カ月登校禁止となり、当然のことながら卒業式も中止。
 先週の土曜日、1つ下の学年が無事に卒業式を終えたことを知り、息子はポツリと「自分たちも一緒にやってほしかったなあ・・・。」と言った。確かに、けじめの式だったから、形だけでもやってあげたい、と誰もが思っていたのだろうけれど。
 仕方のないことだとは頭では分かっているが、親子ともどもなんとも中途半端な幕切れとなった。

 そんなわけで、今日は2年ぶりの卒業式・学位授与式だ。
 午前中に全学合同の式典が都心の大ホールであり、午後からは学部・研究科ごとに各キャンパスに分かれ、都合2回執り行う形になっている。さながら都内横断、縦断の民族大移動で、和装の女子学生は朝から大忙しの大変な日でもある。

 午後の式典での学部長挨拶と来賓祝辞で心に響いたこと。ここは医療人養成の学部・研究科である。
 学部長からは、「私は患者さんを治すことは出来ない。しかし共に歩むことは出来る」という恩師の言葉を借り、白衣を着る者は患者さんの心の支えとなれること、ハンディも持っても楽しく意義ある人生を送るサポートをすることが出来ること、決して上から目線にならず“患者さんから教えて頂く”という姿勢を忘れないこと、病む人、苦しんでいる人、その家族はもっと苦しんでいることを理解せよ、一生勉強である、白衣を着る者として、その重さを忘れずにあれ、というはなむけの言葉。

 そして、私がかつてサードオピニオンを取った都立病院の院長からの祝辞。
 現在、医療は経済に負けている。効率化、マニュアル化、無駄を省くことばかりが言われているが、目指すのはその上を行くこと、なぜなら命を、人間を扱う仕事であるから。マニュアルどおりでは決して満足は得られない。「生きる」ということを考える時、学生時代には、ただ生きているだけではダメだ、目的をもって人の役に立つ人生を送らなければ、と思ってきたが、抗がん剤治療を専門とし、2,000人以上の末期がん患者を看取ってきた今、目的をもってスキルアップすることは確かに大事だが、もっと大事なのは「生きている」ことだと思うようになっている。
 寝たきり老人を生かしておいて何になる、役に立たないのではという人もあろうが、何の役にも立っていないことはない。「生きている」ことは、本人も気づかなくとも周りの人の役に立っているのだ、と。かつて“一人の命は地球より重い”と言われたが、今やそんなことはすっかりどこかに行ってしまっている。しかし、「生きている」ことこそ大切だ、と。
 多くの患者さんたちが死んでいく悔しさを目の当たりにされてきたからこそ出た、重い言葉だった。

 若き医療人たちの心に、これらの言葉がどれほど響いたかわからないが、大学職員としてと同時に、一人のがん患者として、彼らの門出を暖かく見守りたい、と思った。

 昨夜、義母のお見舞い帰りに、ターミナル駅にあるお花屋さんで、心ばかりの薔薇の小さな花束を予約しておいた。私が担当する修了生は7名、男性が2人、女性が5人だ。今日、それを修了生にプレゼント。もはや母親の気分、といったところ。お花を手にして怖い顔をする人はいないものだ。

 昨日は往復6時間、今日も往復5時間弱。さすがにドラえもんの“どこでもドア”でもあればな、と思ってしまう。いや、“ワープ”が出来てもよいのだが・・・。
 明日の往復3時間の通院がいつもより短く感じそうな春の日である。

 帰宅すると今月2回目のお花が届いていた。オレンジのグラジオラス3本、ピンクとラベンダーと白のストック1本ずつ、黄緑色のスプレーマム2本、それぞれ花言葉は「愛の祈り」「思いやり」「清らかな愛」だという。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2012.3.20 義母お見舞いへ

2012-03-20 22:51:47 | 日記
 久しぶりに週の途中の祝日。お彼岸の中日とはいえ、まだまだ風が冷たい。朝のうちに掃除・洗濯をちゃっちゃと済ませて、早めにお昼の後、1月以来ご無沙汰していた義母の入院先へ3人で出かけた。

 義母が倒れてから早くも3か月半が経った。容態に目立った変化はなし。やはりこれ以上の回復はなかなか難しいようだ。会話をしても、いろいろ辻褄が合わなくなってきている、と聞いていたので、私や息子のこともわからなくなっているかもしれない、と思いながら出向いた。

 3月も下旬というのに、いまだに病院ではインフルエンザ対策のため、「外部の方は面会中止」を継続中。面会は家族に限る、ということだった。しかも一度に病室に入るのは1人まで、と受付で厳格にチェックしており、交替でしか病室に入れなかった。

 夫がまず先に病室へ入った。次に、先に到着していた義妹から名札を借り、一足遅れて私も。あまり食が進まないと見えて、いままでプックリと皺一つなかった手が随分痩せていて可哀想だった。私のことを見ると涙ぐんでしまい、こちらも何とも辛い。手を握ってさすってあげるしかなかった。
 その後、息子や義妹と交替し、義弟も遅れて合流して、それぞれ時間差で面会を済ませ、また来るからね、と病院を後にした。

 入院した当初、12月は5時ともなると真っ暗だったのだが、今日は5時を過ぎてもまだまだ明るい。義母が倒れてから3か月半の季節の重みを感じた。そう、冬が過ぎ、春が来ようとしている。これからはどんどん明るい時間が増えていくのだけれど、少しでも早く今の入院生活を終えて、出来る限り普通に近い生活にソフトランディング出来ることを祈りたい。

 明日から週の後半が始まる。休薬週最後の日、明日一杯はまだ自由に動き回れる一番元気な日だ。相変わらず胸の圧痛があってどうにも気になるけれど、何とかやり過ごしたいと思う。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2012.3.19 5カ月ぶりの更新

2012-03-19 20:06:43 | 日記
 10月半ばから更新が途絶えていたひよこさんのブログが、5カ月ぶりにご本人の文章で更新されていた。
 10月以降、一回も更新がなかったが、応援、励ましのコメントは200を超えていた。ご家族がコメント欄に彼女の様子を伝えてくださると、またコメントがつく・・・、が繰り返されていた。

 今回のタイトルは「残された時間」。なんとも重い主治医の言葉から始まった。
 「抗がん剤の辛い副作用で、今より苦しい時間を耐えるより、残された時間を有意義に過ごされるのも、Betterな選択かもしれません。」 =早朝、眠れない病室から・・・とあった。

 私も機会あるごとに、更新されただろうかと訪れていたが、今回は見逃していて、プチ虹のサロンでKさんから更新されていることを伺った。
 Kさんたちは、患者会のスペシャルゲストとして講演をされた時にひよこさんにお会いになっている。私はその後、メールのやりとりはさせて頂いていたが、いまだ実際にお目にかかったことはない。

 誰だって残された時間などわからない。
 震災のようなことがあれば、生と死は本当に紙一重なことだ、と思う。こうして生きていることは自分の意思を超えた力が働いているのだ、と。
 けれど、そうは言ってみても、病気を抱えていなければ、自らの残された時間をリアルに考える私たち世代はいないだろう。平均余命まであと35年も残して、残された時間も何もあったものではないだろうから。

 朝日新聞のネット記事で、“東京・臨海副都心の日本科学未来館で「世界の終わりのものがたり」という少し風変わりで興味深い企画展が始まりました。”という中に、「危機到来までの残り時間の過ごし方」があった。
 30年=「いつもと同じ」
 1年=「逃げる」「大切な人とすごす」「普通に暮らす」
 2日=「しずかに待つ」「大切な人とごはん」
 1時間=「人生を振り返る」「親に電話」
 3分=「家族をだきしめる」「神にいのる」
だそうだ。

 いろいろなコメントがあった。
 十人いれば十人十色。いろいろな考え方がある。

 私に残された時間はわからない。私の主治医も上のような発言をする日が来るのだろうか。
 けれど、誰の残された時間もわからない。

 だからこそ、やはり一瞬一瞬を大切に自分に恥じないように過ごすしかないのだ、と思う。

 今は減量して新しい抗がん剤治療を開始した彼女の快復を心から祈りたい。

 さて、新しい1週間が始まった。気圧のせいなのかお天気のせいなのか、また頭が痛い。
 今日は早く休んで明日のお見舞いに備えなくては・・・。



コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2012.3.18  今月は4人で・・・

2012-03-18 21:07:41 | 日記
 昨日ふやけるほど温泉で長湯と低温サウナの梯子をしたせいか、久しぶりに夜中に途中で目覚めることなく6時間連続の睡眠がとれた。
 今朝は足湯をして、いつものようになかなか起きない息子を起こして遅い朝食ブッフェに向かった。
 今朝も相変わらず、今にも泣きだしそうな空模様。それでも早くも窓の外には、遊園地に向かう人や、昨日に続いてコスプレの人たちで溢れていた。

 昼前にチェックアウトしてから、夫と息子と別れ、私はプチ虹のサロンの月例会へ向かった。
 普段と違う地下鉄に乗ったところ、僅か10分足らずで会場最寄駅に到着。ホームでKさんから声をかけられる。いつもKさんだけこの地下鉄に乗ってこられるから、もしかしたらお会いするかも・・・と思っていたところ、車両は違えどもやはり同じ電車に乗っておられたのだ。
 2人でゆっくり歩きながら会場へ向かった。紅白の梅が満開だった。あと半月もすれば桜も花開くだろう。それにしてもいつまでも寒い。

 会場に到着すると、Sさんが到着済みだった。もう一人のSさんは小一時間遅れるという連絡が入り、3人でとりあえ再会を祝して乾杯。今日は、残念ながらTさんが入院中のため4人での開催となった。
 治療薬のチェンジや腫瘍マーカーの上昇等、各々が気になる話をしながらも、しっかり沢山笑って、免疫力アップのための情報交換等、これまたあっという間に5時間が経過した。
 個室でお料理がサービスされる時以外、こちらから連絡しなければ放っておいてもらえるのがいつもながら有難い。先月と同じ会場だったので、メニューも変えてくれるなどの気配りも嬉しい。
 帰る時には、来月は?と聞かれてしまったほど、担当のウエイターさんとすっかり顔なじみになっている。
 ホテル入口の紅白の梅がとても美しかったので、4人で記念撮影をしてきた。

 次回は3週間後。昨年と同じ会場でお花見会だ。予報では月末に開花宣言のようなので、その1週間後、おそらく満開になっているだろう。今から楽しみなことだ。

 夫と息子は、お天気が悪かったせいで寄り道をせずにまっすぐ帰宅した模様。私はご機嫌伺いにお菓子を買って帰宅したが、最寄駅ではまだ小雨がぱらついていた。有難いことに夫が夕食当番を引き受けてくれていた。

 明日からまた新しい1週間が始まる。火曜日は3人揃って久しぶりの義母のお見舞い。そして水曜日には勤務する大学の学位授与式があるため、通院日は木曜日の変則週だ。


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2012.3.17 まったり夜遊びヒーリング

2012-03-18 00:13:52 | 日記
 4年近く前、再発治療が始まってまもなく、ジャイアンツのナイター観戦をした夫と息子がドーム内にいる時間、私は一人で隣接のスパ・ラクーアで過ごしたことがある。その時は野球の試合の間だけだったので、入館する前に夕食を済ませて一通りのお風呂に入り、ちょっぴり足裏マッサージをしてもらって、カップルだらけのヒーリングバーデをちょっと覗いてあっという間に3時間弱が過ぎてしまい、なんだか不完全燃焼だった記憶がある。
 是非もう一度、もう十分!と言えるほど堪能したいと思っていながら、その後タキソテールの治療のために脱毛して、なかなか温泉に行くことが出来ず、それっきりになってしまっていた。

 今回、夫が今月末までのペア招待券を頂いてきてくれたので、では!ということでいそいそと近接のホテルも予約して、3人で出かけた。お風呂嫌いの夫は、自分は留守番しているから息子と2人でどうぞ、と言っていたのだが、そうなると夕食の時間を挟んで中途半端な時間しか過ごせず、またもや忙しく出てくることになり不完全燃焼になってしまいそうだったので、マッサージもおごるし、美味しい食事をご馳走するから、楽しいから、と強引に夫も連れてやって来た。

 ホテルにチェックインしてから出かけると、ホテル周辺は、何とこれまでテレビでしか見たことのなかったコスプレの若い男女で溢れていた。さすがに間近に見るとかなりの迫力で圧倒された。息子曰く「レイヤー」だそうで、いやはや驚いた。

 お天気が雨模様だったせいか、館内はかなりの混雑で、当初、ヒーリングバーデは入場制限とのことだった。それでもスパに入った後、夫と私はフットケアを、息子は酸素カプセルを体験した頃には入場制限が解除され、夕食後にこちらのサウナも全て制覇することが出来た。
 低温サウナで汗をかいた後、再びスパで汗を流して出てきたのは先ほど。こんな夜遊びしたのはどのくらいぶりか。私たちが退館する頃に入ってくる若い人たちは、今日はここでお泊りなのだろう。

 それにしても、我ながら2枚のご招待券を頂いて、宿泊代と館内のもろもろの利用料でその10倍のお金を使っているのだから何とも馬鹿なことである。
 とはいえ、こうして3週に一度の休薬週の週末、ようやく風邪も抜けて元気に出かけられるほどになったのだ。大好きなお風呂三昧でまったりと癒しの時間が過ごせ、「私はまだまだ死なない気がする!」と言わしめてしまうのだから、よしとするか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする