昨日は少し早めに職場を出て一旦帰宅後、みなとみらい地区のホテルを目指した。駅を降りると、皆がスマホを空に向かって掲げている。雨が上がって雲の切れ間から大きな虹が架かっていた。今年は虹に遭遇する機会が多い。いいことがあるのかも!
チェックインした部屋からは大観覧車のイルミネーションが美しい。息子がお世話になった遊園地もライトアップ。屋形船も沢山出ている。
ほどなくして夫が出張先から合流し、部屋で一服。予約していた中華レストランに降り、眼福、口福の1時間半を過ごした。9種類の前菜から珍しいゴーヤを使ったデザートまで大満足だったのだけれど、部屋に戻ってまた腹痛・・・案の定お腹を壊す。本当に情けないことである。
さて、前泊し、万全の態勢で迎えた今朝である。土曜日恒例の、ベッドの中で朝の連続テレビ小説を視、のんびり起きてブッフェの朝食へ。夏休み中の土曜日、かなりの混雑だ。カップルだけでなく、ちびっこや赤ちゃん連れの家族で溢れている。幸い窓際の席を案内され、カスタマイズしたオムレツを焼いて頂き、野菜も果物もたっぷり頂いてすっかり満腹。昨夜の腹痛をものともせず、懲りずに今朝も・・・、でも食後はお腹が緩い。トホホ。
部屋に戻ってチェックアウトまでまったり過ごす。夫は食休みなのか、起きて朝食が済んだだけなのに、またしてもベッドで寝ている。その間私は昨日電車の中で読み切れなかった樹木希林さんの「この世を生き切る醍醐味 最後のロングインタビュー」(朝日新書)を読み終えた。亡くなる半年前、7時間に及ぶロングインタビュー(新聞連載したものも読んだが、大分割愛されていたようだ。プロローグに出てきたNHKスペシャルも視ていた。)を全収録したものに加え、両親を相次いで亡くされたお嬢さん、也哉子さんのインタビューも読み応えがあった。
そうこうするうちにチェックアウトの時間が迫り、夫を起こす。開場までまだ少し時間があったので、ラウンジでお茶をして時間調整。会場前で夫と別れた。
昨年も参加する予定だったが、ポルトガル旅行から帰国した翌日、朝起きるつもりが気づけば昼という酷い寝坊(時差ボケの成せる技だ)をして、泣く泣く参加を見送った。2008年から2011年まで、再発以来4年連続で参加し、それ以降今の会場に変わってからは3年前2016年に参加、今回は3年ぶり6回目の参加となる「かながわ乳がん市民フォーラム」である。
第18回のテーマは『みんなで学ぼう!乳がんと遺伝子・遺伝~ゲノムってなに?遺伝するの?医療の未来は?~』である。
開場後2分ほどしか経っていなかったが、既に良い席はかなり埋まっていて、びっくり。最近、講演会には大分足が遠のいている私、皆さんの向学心と熱意に圧倒される。
気づけば患者歴14年半、再発歴11年半になったが、この間の医療の進歩は実に目を見張るものがある。勉強しないととても追いつかない、と言うのは医療関係者ご自身も同様のようだ。ご多忙の中、こうして土曜日も返上でこうしたイベントに尽力される先生方には心底頭が下がる。
司会の土井卓子先生は2回目から参加されており、36年の医師人生の半分になるそうだ。ここで情報を上手く知って治療と向き合うのがフォーラムの役割だと仰る。資料には表がピンク、裏がブルーの紙が配布されていたが、これを使って質問をしながら会場参加型のフォーラムにしたいとのこと。3年ほど前から、先生方の講義を乳がん体験者の方たちが生徒になって聞き、会場を代弁して質問等をする形式になっている。講義(授業)だけでなくその後の放課後、体験者たちのよもやま話も楽しみな構成である。
今日は校長先生役の清水哲先生直々の特別講義からスタート。小学生でもわかるレベルで、と「遺伝と遺伝子のおはなし」を30分ほど。難しい話を易しく話すのは何より大変なことだけれど、スッキリ整理されて頭に入ってくる。
続いて「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」いわゆるHBOCの講義を吉田達也先生が質疑応答を含めて30分ほど。熱中すると早口になるので・・・と自己紹介されていたが、テンポ良く、家族歴と遺伝性乳がんはイコールではない等、分かり易い講義だった。
ここで15分間の休憩。開場はほぼ満席。お手洗いも長蛇の列。
後半は「実際の外来診療における遺伝の話」というテーマで蒔田益次郎先生の講義からスタート。20分ほど質疑応答を含めて具体的にコンパクトにまとめられた。
そしてラストが主治医である有岡仁先生による「遺伝子パネル検査とゲノム医療」だ。最初から生徒さんたちからの沢山の質問が。再発以来先生とは11年半のお付き合いだから、病院での白衣姿は見慣れているが、こうして病院の外でスーツ姿を拝見するのはとても新鮮。そして何より誠実でおられるお人柄、ちょっとジョークを仰るにもその真面目さが滲み出てチャーミング。
ああ、この先生が主治医でよかったなあ、としみじみ有難く思いながらメモを取る。6月に保険適用になったばかりのパネル検査だけれど、検査が治療に結び付くのは1~2割というし、採血だけではなく検体が必要となると、なかなか厳しいなあと改めて思う。
残すところ1時間弱。ここで舞台は配置転換。学級委員の毎日新聞記者、三輪晴美さん(インタビューで何回かお世話になり、私と同じステージⅣで10年以上治療を続けておられる。)が中央に座り、40代から60代まで、術後半年から19年までの6名の体験者(全員再発なし・・・この人数なら1人ないし2人は再発患者さんがいても良かったかな、と思う。)と薬剤師さん、看護師さんの両名が脇を固める。
お一人ずつ今日の講義の感想を述べた後、実際にHBOCのカウンセリングを受けた方のアンケートの紹介等、盛り沢山のよもやま話タイムがあった。
三輪さんが締めたコメント、「ステージⅣとなり11年目、段々厳しくなってはいるが、粘って頑張っていきたいし、今日の講義に希望を持てた。再発しても大丈夫という医療があればいいなと思う。」が私の気持ちを代弁してくれているように感じて、印象的だった。
と同時に、初発で10年以上20年近く経った人たちはもう乳がん体験という呪縛から解放されても良いのではと思った。
乳がんは他のがんと違って、5年で卒業とはいえない意地悪な病気である。だからこそ、皆さん再発したら、という不安から離れられずこうしたフォーラムに参加するのではないかとも推察する。けれど、実際再発してしまうと、再発後の治療は初発よりずっと長い(エンドレス)。
だから、初発治療が終わったら(再発しない可能性が大きいのだから)あまり再発不安に苛まれず、日々を楽しく明るく、やりたいことを我慢しないで過ごした方が良いと思うのだ。今後ゲノム医療が進歩して、外科手術が不要になる日も夢物語ではなさそうだ。また、再発しても大丈夫、と希望が持てれば、再発してから考える、というスタンスで十分になるのではないだろか。そんな日が一日も早くやって来てくれることを願いたい。やはり細く長くしぶとく生きるに限る、である。
そして締めは会の代表の須田嵩先生による閉会のご挨拶の後、病院から3.5km、5,600歩というウオーキングを先生が自ら映したビデオレターで会場がほっこり和んだ。
予定より若干早い時間にお開き。会場入りしてから3時間半弱は瞬く間に過ぎた。
主治医と三輪さんにお疲れ様のご挨拶を済ませ、ホテルで荷物をピックアップした夫と開場前で合流。私が会場にいる間は日本丸ミュージアムを堪能したそうだ。
再び最寄り駅から横浜駅まで移動。ここで6月の誕生日に乗車したロイヤルエクスプレスのお土産であるロイヤルカフェのお茶チケットが登場。当日下車後に寄って帰らなかったのは夫曰く「これを残して置けば、また横浜に遊びに来る言い訳が出来るでしょ。」とのこと。
ブランチブッフェ以降お昼抜きだったので、2人ともお腹ペコペコ。満席で待たなければならなかったが、わざわざ途中下車したのだから、引き返すわけにもいかず。
カフェの店内はロイヤルエクスプレスを模した造りになっていたけれど、当然ながらちょっとチープ。車内で買い求めたCDが流れていて、車内を想い出すことは出来たけれど、軽食を摂るには小さな丸テーブルであまり落ち着けなかった。サンドイッチとカレーを頂いて早々に出て、再びJRに乗る。2人とも席を確保出来、眠くてたまらずちょっとウトウト。乗換駅で買い物をし、最寄り駅に戻ってきた。大分日が短くなったが、マジックアワーの空が美しい。
帰宅後は夫がさっぱり素麺を茹でてくれた。久しぶりのお天気で、気温も上がり、頭を総動員して3時間の講義を聴いたのでちょっと疲れた。
明日はまた合唱練習の日。今日も早めに休みたい。