インテリジェント ワークス

子供達との泣き笑い

想像力

2007年05月07日 | 歴史

野球は頭を使うスポーツです。

次に起こる事態を予想しているか、していないかでは動きその物が変わって参ります。
特にそれを要求されるのが守備の時。
ランナーがいる場合等は尚更です。

その為に野球の指導で良く言われるのが「次のプレーを予測しろ」「捕ったらどこへ投げるんだ?」「カバーは必要ないのか?」などなど、選手その物が次のプレーを想像する事を教えているんですね。

この時、打球やランナーの速さなどを考慮して、より多くのプレーを想像できる選手が上手と呼ばれ、全く予想もしていない選手が下手と区別される事になります。


ところが。
想像力が優れているお陰で、厄介な事態も起こるのです。

それは恐怖と言う感覚。

お化け屋敷でもジェットコースターでも、人は想像力が有る故に恐怖を感じるのですね。


この恐怖と言う感覚。
実際に恐怖を感じてしまったら、他人に何を言われようと怖い物は怖い。
「怖くないから」と優しく言われても、本人が納得するまでは怖いのです。

先の日記でも書きましたが、初めて野球をやる子供にとってボールを捕る作業と言うのは、自分に向かって来る弾丸を素手で捕るようなものです。

「避けるな」
そんな事言われても避けます。

「正面に入れ」
そんな無茶な。

「怖くない」
嘘つけ。

指導者が怒ろうが、怒鳴ろうが、当の子供達にしてみれば目の前の恐怖から逃げるのが先なんですね。

挙句の果てに。

「当たっても痛くない」
痛いです。

「根性を見せろ」
どうやって?

「気合で捕れ」
捕るのはグローブです。

第一、根性なんて単語は英語には有りません。
日本人が夢見るメジャーリーガーは根性でボールを捕った事が無いのです。

実際に自分がそこに立てば、怖いし避けるのに、子供達にそれをやれと言っても出来る筈が有りません。
塾長は小学校から社会人まで野球をやっていましたが、未だに速いボールは怖いです。


かと言って、ボールをいつまでも怖がっていたら、一向に野球は上手くなりません。

そこで、平成塾では恐怖を理屈で教えるのですね。


まずは優しくボールを投げてやります。

この段階で、初めて野球をやる子供は恐怖を感じているんですね。
ボールを投げると身体が横に避け、捕る直前には顔がボールと反対方向に向きます。

最後までボールを見ろと言っても、そんな怖い事は出来ません。
もしも空中でボールが90度も角度を変えて曲がって飛んで来たら、顔に当たるかも知れないなんて考えてしまうからです。

で、次に・・・・


真っ直ぐ立たせて目を瞑らせます。

完全に目を閉じた事を確認すると、ボールを顔のすぐ横に投げてやります。

突然の衝撃音に子供達は飛び上がります。
目を瞑った瞬間から周りで何が起きているのか解らない状況。
突然自分の横での衝撃音。
やられた子供は恐怖の絶頂を迎えた事でしょう。

そこで子供達に質問。
「目を開けている時と、目を瞑った時ではどちらが怖かった?」
普通の感覚を持っている子供なら、間違い無く目を瞑った方が怖いでしょう。

それを理解したら初めてこの練習の意味を説明してやります。

ボールから逃げるあまり、ボールから顔を逸らすという行動が恐怖心を煽っているのです。
つまり最後までボールを見ていれば、そこまで怖くは感じないよ。

大きく頷く子供達。

まずは理屈で理解させて、次の段階で目を慣らして行くんですね。




ボールなんて怖く無いと言うお父さん。
もしも自分の正面に全く回転していないボールがハーフバウンドで飛んで来たらどう感じますか?
それが硬球で、グラウンドが荒れ放題荒れていても、怖くは有りませんか?