綾辻行人の館シリーズを2作ほど読み、そのまま館シリーズの3作目に行く代わりに、
ちょっと横道へ逸れて、ホラーっぽい『Another』を手に取ってみた。
これが予想以上のおもしろさ。館シリーズはそれなりに楽しめたものの、
夢中になって、シリーズ全部を読破したいと思うほどではなかった。
『Another』の舞台は中学校で、おもな登場人物は中学生なのだが、
おとなが読んでもじゅうぶん楽しめる話になっている。
ラノベ風イラストつきの文庫版もあるが、けっしてラノベではない。
また、ホラーとはいうものの、本格ミステリー作家だけあって、
呪いの約束事がきちんと決められており、3年3組に掛けられた呪い自体は
解かれないが、今年のクラスにふりかかった災厄には解決策が設けられていて、
それは超自然的な方法ではなく、ミステリ的謎解きで解決されることになる。
670ページという大部にもかかわらず、展開にぐいぐい引き込まれて、
近頃にない速さで読み終えてしまった。端緒の小さな謎から、本質に迫る大きな謎まで、
手がかりが会話の端々にうまく散りばめられて、のちに明らかにされると、
ああ、そうだったのかと納得できるのだが、最初に読んだときは体よくはぐらかされた。
さいごに鍵となる人物(ミステリでいうなら犯人に当たる)にしても、
あざやかにだまされて、その手があったのかとうならされたところなど、
良質のミステリに比肩する。もちろんキャラの魅力も見逃せない。