年末恒例の群馬で開かれた杉やヒノキの素材の展示会で今年も最優秀賞。ここ数年林業に携っていたためか、多少は木を見る目が養われたと思う。今年は我社から100年前後の杉を出品した。採点は素材の質である色、太さ、年輪の詰まり具合や真っ直ぐな材であるか、真円に近いかなど。また、切り株の美しさ、木の表皮の剥がれが少ないかなど切り出す時の技量などで競う。出品木の出来の品質は他を圧倒していると感じた。只々、先人の杣人(そまびと)の弛まぬ管理には頭が下がると共に、現場の連中の努力と技量の研讃には感謝する。
丹精に育てられ100年の年輪を重ねた木は、美しくもあり神々しくもある。切り出されて初めてその価値が認められる。しかし、いくら良い木でも切り出し売るとなると大きな赤字となる。作業道を整備し切り出し市場まで運搬する経費や、市場の手数料などが木の価格とつりあわないためだ。木材価格の下落で林業での採算は遠く及ばない。放置された森林や里山が日本国中溢れかえっているのが現状である。大規模経営以外、林業経営に魅力のない世界である。
山の木は自然の朽ちるに任せ自然の更新が最良との考えがある。この考えは山を荒れるが儘にしろと言うに等しい。計画的な間伐や木の更新は元気な木を生み出し、土砂崩れや洪水を防ぐ効果があり適正に管理された森林は緑のダムと言われている。 神戸の土砂災害然り、集中豪雨が多くの山里や山際まで開発された住宅地を土砂が襲い、主要河川すらも平野部を水が襲っている。堤防工事や都市化への対応不足などと矮小化され気ずかされていない。しかし、大本では山林の荒廃の現実の姿でもある。
堂々とした如何に素晴らしい木ではあっても山にあれば、飢えた熊や増殖しすぎた鹿の皮剥ぎの被害にあい腐り売り物とならなくなる。その前に、世に送り出し、後の100年を人様に愛で役に立ってもらう事が木を生かす道だと思う。最近ようやく、木の価値を見つめ直す機運が出てきた。計画的に伐採と植林されている森は、CO2対策と土砂、洪水、渇水対策、そして多様な生態系を育むことが知られている。
最近では違法伐採の少ない国産材で建築物や土木資材を供給する事の大事さに気付き、漸く、「水循環法」成立もあり、国も動き始めたようだ。木質バイオマスを活用した発電や水素エネルギーの創出、また、途上国での歯止めの効かないマングローブなど広大な森林破壊の抑制など、案外と知られていない世界有数の森林大国日本、その役割は大きい。再コンテストの末、決定したオリンピックスタジアムには多くの木材が使用されると聞く。木材を見直す機運が生まれることを祈り大歓迎である。