11月初旬、東北の秋は過ぎ行く直前にある。いつもの仲間七人と東北の秘湯「蔦温泉」。「蔦温泉」は奥入瀬と八甲田の間にあり、青森と八戸を結ぶルートの中間点近くである。奥入瀬渓流と八甲田山の両方を一泊で回る強行軍である。
新幹線の終点八戸へ。青森までの新幹線開通間近の八戸は単に通過駅となるのか、今が正念場のようだ。便利になって青森から支店や営業所の撤退も危惧されている。ストロー現象と云うそうだ。はるか沖地震の調査に八戸へ来た時以来である。
まず、八戸駅前でレンタカー2台に分乗し八食センターへ。昼食と地酒購入の目的だ。 寿司のいちば亭に入り、店お薦めのいちば亭海鮮丼や三色丼に併せてせんべい汁を注文。せんべい汁が初めての仲間が殆どで、出てくるものが待ち遠しい。このセンベイよく煮ても芯がモチモチとして歯ごたえがある。
買い物も終わり一路「奥入瀬渓流」へ。思ったよりも奥入瀬は混んでいない。路端にも駐車できる。これならと一挙に十和田湖まで足を伸ばす。奥瀬の桟橋から見る御蔵半島の錦秋の十和田湖は美しい。奥入瀬を戻りつつ車中から紅葉鑑賞。蔦温泉へは4時前に到着。別館にチェックイン。カメ虫の潰し方と館内説明を聞きながら50段以上の長い階段を上った先が部屋。
仲居さんの玉虫の潰し方と風呂などの案内を聞く、ついでに食事時の持ち込みの酒について聞くと「まったく構いません」と快く了解してくれる。お客あっての旅館業、当たり前のようだが嬉しいことだ。当館自慢の掛け流しの内湯、足元の湯船の床板の隙間からプクプクと温泉が沸き出てくる。温泉は無色透明の塩化泉で湯温も適度だ。宿の帳場や部屋、風呂場も相当の歴史を感じる。食事の質と量、山奥の秘湯とは思えないくらい充実している。 夕食時に、宿のメニューから「純米ぶなのかおり」、購入してきた青森の地酒、五戸の「純米吟醸生 如空」、八戸の「特別純米なまちよ八仙」ほか2銘柄で気持ち良く酔いながら満腹感。
翌朝の朝食後、蔦沼五沼一周ハイキングへ日和見を決め込んだ3人を残して4人で出発。15分も歩くと突然静粛な秋色とはこんなもんだと主張しているような蔦沼が現れてきた。ハイキングルートは落ち葉の敷き詰められた小一時間の小さな上り下りの連続。日頃の運動不足の足が笑い出す。休憩舎のある菅沼の素晴らしい風景でほぼ一時間の山の散策を終点近くに「熊・野犬注意」との看板でぞっとする。
蔦温泉を出発、時間の関係で谷地温泉入り口をやり過ごす。城ヶ倉大橋や白樺の林を途々休みながらレンタカーの利点をフルに生かして酸ヶ湯温泉に到着。昔の鄙びた温泉の風情は既に無い。せめてはと思いつつ大風呂に入るが湯の泉質は変わらないが昔のイメージと大きく違う。違う理由は大風呂の湯船の中に新たに造られた仕切りのようだ。覗かないでくださいとの注意書きが何とも無粋だ。巷に名が通る程、そうなるのだろうと実は納得。
酸ヶ湯温泉を早々に八甲田ロープウェイの礼儀正しい女性従業員に送られて山頂駅に。山頂は残雪で泥沼状態。少ない置き長靴の中、空いていたXLを履き30分の山頂コースの今朝からの二度目のハイキング。生憎の曇り空で景色はいまいちだが山頂のカルデラの湿原はしっかり視界に入る。寒い山頂を早々にロープウェイ麓駅の食堂でめいめい昼食を注文。当然にビールを注文するが運転担当はウーロン茶。運転手さんご苦労様です。
限られた時間、新幹線の時間まで土産を漁りに再度八食センターへ。青森までの新幹線開通後も、八戸の健闘を祈るばかりである。
1泊の強行軍に帰りの車内の盛り上がりはなく、帰り用に仕入れた酒も余り気味、皆さんおつかれの様子。さもありなん。