その昔、オジンが紅顔の美青年の学生時代。ダットサントラックを運転して親父の得意回りに付き合い、時折寄った京急の「青物横丁」は潮の香りが漂う下町だった。今は駅周辺でも面影はなく、海側の埋め立てに高層オフィスが建ち並び様相を一変させている。
昨今、やたら格好いい名前に変えたがる風潮に逆らうかのように、今でも駅名に「青物横丁」という名を残しているは嬉しくも懐かしい。
しかし、駅近くの最近の新築マンションの名前が「青物横丁」を冠しない。古臭くさく感じるのか、やたら「何々品川」なんぞと名付けている。「○○青物横丁」とした方が場所が判かり易く歴史を感じていい呼び名じゃあありませんか。地元の地名は変わったが、駅名を昔ながらに残しているのは京急の識見であり評価したい。
さて、まだ明るい六時前、そんな青物横丁の駅前通りに会社の相棒から「長崎横丁」があるというので覗いてみたくなった。駅前をシーサイド品川方面へ2~3分の二つ目の交差点手前の右側。コの字カウンターだけの12~3人も入ればいっぱいの店だ。
このエリアでは、六時前ではまだ早いせいか客は誰もいない。コの字カウンターの一番奥へ陣取り、まずは生ビールを注文。肴はカウンターの上にいっぱいに並べられた煮物、焼き物、揚げ物、豚バラ串などが10数種類が大皿に盛られている。物にもよるが一品約300円だそうだ。お酒は焼酎がメインで日本酒はメニューにも見あたらない。あえて頼めば「菊正」だそうだ。ビールの後は、棚に並んでいる「いいちこ」など定番もののキープボトルもあるが、一番人気の芋焼酎「黒霧島」を注文する。その他のボトルも客の要望で、その都度女将が仕入れるそうだ。
7時頃には店は常連さんでいっぱいになってきた。近くの会社帰りであろうか熟年の常連さんが多い。肴は焼いて貰う豚バラの串とゴーヤチャンプル、とあと数品を注文。家庭的な雰囲気で料理の味がしっかりしている。長崎出身の女将も気さくで明るい。レトロなビールのポスターが似合う落ち着ける店である。
二人で1時間半強。ボトルを入れて一人3000円弱を支払い、まずは「初見参の巻」でした。