大人の休日倶楽部を利用して二泊三日で乳頭温泉へ。東京駅発「こまち」の仲間と上野で合流。車内では、相棒達は座席を回転して、既にビールで盛り上がっている。さてこれからの3日間が容易に想像できる。
晴天の田沢湖駅を降り、駅前で宿用の日本酒を購入後、タクシーで湖畔のレストラン「ORAE」へ直行。特製のソーセージやピザなどを肴に自家製の金賞ビールで昼食をすませる。真っ青な湖を眺めながら湖畔を渡る風に吹かれて、ほろ酔い気分でブラブラと。乳頭温泉行きのバス停まで10分ばかり歩く。
乳頭温泉郷終点、温泉郷の最奥「蟹場温泉」へ。まだ、夕食まで相当時間がある。ひと寝入りの後、この温泉の売り、露天風呂「唐子の湯」へ。宿の裏手からブナの森の間を100mぐらい歩いて行くと坂を下りた小川の脇に広々とした露天風呂が目に入る。脱衣場は男女別だが、中は混浴である。掛け流しの温泉で湯ノ花が浮いている単純硫黄泉の透明なお湯である。女性は抵抗があるかも。岩と木の男女別の内風呂もあり、特に木風呂は広々として木の温もりが気持ちが良い。
広間での食事は、山菜中心のどちらかというと皿の数の割に質素な構成。仙北の地酒「秀よし」のお燗が一本付いてきた。この「秀よし」田沢湖駅前でも仕入れてきた。やや甘口だが飲み口が優しい。燗酒を飲んだ後は、食事の席に持ち込んだ秀よしの「純米原酒 田沢湖」四合瓶を楽しむ。金曜日なので広間には2~3組。最終便で席を立つ。
朝もやの「唐子の湯」でひと風呂浴びて、いよいよ一日行程の乳頭温泉めぐり。1500円で湯めぐり帳を購入し、「鶴の湯」まで小一時間のハイキング。鬱蒼たる山奥を水も持たずに湯めぐりセット(タオルだけ)を手にしての山行。これでサンダルだったら隣の風呂屋へちょいとという姿だ。
送迎バスでバス通りの分岐まで下る。10分も待たずに乳頭温泉行きのバスに乗り終点のひとつ前「妙の湯温泉」へ。河原沿いの露天「妙見の湯」へ直行。茶褐色の湯船、広々した川筋の堰堤の水しぶきと茶色の湯がマッチして、湯加減と雰囲気が最高である。内湯は、やや透明な緩和性単純泉「銀の湯」があり洗い場はシャンプーなどのセットもあり綺麗で充実している。受け付けの魅力的な女性が女将だろうか。玄関の清楚な生花が旅館の良さを感じさせる。女性に人気があるのが頷ける。
。ついでに岩魚の骨酒二合を2つ注文。これから、ここの風呂に入ってから、空吹湿原を越えて黒湯温泉への山行を控えている。追加注文の輩の動きにストップをかける。
想定外とはこのことか、ホテルの風呂も十分楽しめる。露天風呂はやや茶色かかった湯船、内風呂はやや透明で泉質が違う。単純硫黄泉、炭酸水素塩泉の2種類の源泉はいづれも肌触りが良く温まる。次のハイキングを控えているので名残惜しいが早々に出発。
山道を掻き分け約20分、水芭蕉の群生地といわれている空吹き湿原へ到着。水芭蕉のシーズンは終わり一面の葉畑。周りの風景も林に囲まれ地味。黒湯への道に迷うが偵察隊の御蔭で危うく難を脱する。
「黒湯温泉」は鄙びた山間の出湯の風情。湯めぐり帳も5箇所目のスタンプ押印。上の湯、下の湯があり、まずは上の露天に。露点風呂にはカップルの先客。女性はバスタオルを巻き入浴。旦那らしきお方は一見堅気の方ではなさそうな風情。「ごめんなんしょ!」とばかりにご隣浴。木作りの開放的な露天風呂は透明感のあるサラサラとした感覚。ここもまた他の湯とも趣の違ういい湯だ。次の「孫六温泉」もあり湯あたり防止で「下の湯」は覗くだけにした。
さて、5カ所目の「孫六温泉」は歩いてすぐのところにあった。川岸沿いにひっそりと佇んだ茅葺きの宿は、湯治場の雰囲気は乳頭温泉群でも一番だろう。露天風呂に直行。男女別の脱衣所を出ると中は混浴の内風呂があり、外には透明な単純泉の露天の岩風呂がある。風呂はやや小さいが、河原沿いにあり視界が開けている。「山の薬湯」と呼ばれている気持ちいい温泉である。
夕食まで時間があるが、いささか湯疲れの感。締めくくりの「大釜温泉」は翌日の予定とする。宿に着いてから夕食までのお昼寝タイム。リフレッシュの後、部屋で刈穂の「六舟」で暫し歓談。勢いで夕食の席に買ってきた「純米吟醸 松声」の一升瓶を持ち込むと宿から「持ち込み代をいただきます」との事。この手の山奥の宿で持ち込み代を請求された経験は記憶にない。付いている燗酒と酒の追加で食事終了。さっさと部屋に戻り、「松声」の一升瓶と残っていた太平山の「澄月」で2次会。
女性タイムが終了した頃を見計らい「唐子の湯」へ。ほろ酔い気分で、風呂の脇に大の字に寝そべり夜空を見ると満天の星空。都内では決して見ることが適わない星空の下、背中を流れる暖かい湯が睡魔を誘う。
翌朝、九時の「大釜温泉」のオープンに合わせて宿を出る。宿の前にはバスツアーの一団が待機している。宿の計らいかツアーより時間を早めて入れてくれる。我々だけで心地よい露天を満喫する。田沢湖駅行きのバスの時間まで高原の風に吹かれて体を冷やす。
田沢湖駅前では、地元の農業高校の生徒達から学校で飼育した特製豚の焼き肉を振る舞ってもらう。これで角館での昼飯まで持ちそうだ。
初めての角館での武家屋敷の見物も早々に、稲庭うどんの「十兵衛」へ。東京への帰りの時間はたっぷりとあるとばかり、ここでも地元の燗酒のお代わりで時間潰し。
秋田の乳頭温泉郷、車で回れば簡単だが足で挑んだ二日間。梅雨時にもかかわらず、天気にも恵まれ全露天風呂を巡り終えた。いい大人の休日でした。