2024年5月27日(月)
> 1931年5月27日、スイスの物理学者オーギュスト・ピカールは気球による成層圏飛行に成功した。この時に使われた最新型の水素気球は、容積1万4千立方メートル、直径30mという巨大なもので、密閉型の円形搭乗室がつけられていた。
ピカールの目的は、成層圏での宇宙線やオゾンの観測、また成層圏での航空法の研究であった。気球はドイツのアウグスブルグを未明に出発して、16,940mの上空まで到達し、この日の夜、オーストリアのチロル山中に着陸した。気密室からの空気漏れなどのトラブルに見舞われたが、無事生還することができた。
ピカールはその後、方向を転じて深海に興味をを抱き、深海潜水艇バチスカーフを建造する。それまでの深海探査は、潜水球という、船からワイヤーでつり降ろされる装置で行われていたが、自由が効かない上、ワイヤーの長さしか潜ることができなかった。ピカールのバチスカーフは自由に海底を動ける機能があり、研究の跡を継いだ息子、ジャック・ピカールの改良によって1960年、1万メートルを越える深海に到達した。ピカールは天空と深海、二つの1万メートルを制覇したのだ。
晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店)P.153
左:父 Auguste Piccard 1884年1月28日 - 1962年3月24日
右:子 Jacques Piccard 1922年7月28日 - 2008年11月1日
オーギュストにはジャンという双子の兄弟があり、オーギュストは左利き、ジャンは右利きであったため、母親はそれで二人を見分けたと Wiki に書かれてある。それほど似ていたのなら一卵性双生児だったのだろうが、それなのに利き手が左右に分かれるものだろうかと、そこが不思議。
何しろピカール一家は似たもの揃いだったらしく、ジャン・ピカール、その妻ジャネット、彼らの息子のドンが気球飛行家、オーギュストの上述の息子ジャックは海洋探検家で、そのまた息子のベルトランが気球飛行家と来ている。
ベルトラン・ピカールは僕と同世代の精神科医でもあり、1999年3月1日から21日にかけて気球による初の無着陸世界一周飛行を達成した。1997年に燃料漏れ、1998年には中国の領空通過拒否で失敗した後の三度目の正直とのこと。家風もここまで来れば立派なものだ。
成層圏と深海では方向が逆だが、浮力をコントロールするという技術上の要点が実は共通している。オーギュスト・ピカールはこの点を見通していた。
Bertrand Piccard 1958年3月1日 -
資料と写真:
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