※オマーン、UAE編(南アジア、アラビア半島カヤックトリップ)の続き記事。
ペルシャ湾というとまず湾岸戦争を思い出すが、当時テレビのニュースなんかでロケット弾が花火のように行きかう夜空の映像が頻繁に映し出されたりすればするほど、まるで現実感がなかったことを覚えている。またここホルムズ海峡も、きなくさい国際情勢と絡めて知識として知ることはできるが、リアルにイメージすることなど困難だ。
ペルシャ湾とアラビア海とを結ぶ海域の中でも、最も海が狭くなるここホルムズ海峡。マス・メディアで触れる知識とは裏腹に、というかそんな世界情勢などどこか別の惑星での出来事にすら思えるような、この沿岸べりに生活する庶民の、の~んびりゆったり流れる平和な日常。その、たぶん1000年ほど大昔からさほど変わらぬ、悠久の時間を垣間見ることができて面白かった(詳しくは前記事参照)。そしてむき出しの身ひとつでカヤックに乗り海上に出るとさらに、万年とか億年単位もの悠久の時間を生きるイルカ、ウミガメ、サメ、マグロなどさまざまなダイナミックな海洋生物に出会い、その生々しい躍動感に肉薄することができて、ワンダフルだった。
カヤックに乗ってトリップしてると自分もだんだん海洋生物になったみたいな感覚になってくるけれど、そんな中で彼らのような野生の海洋生物に出会うと不思議な親近感が湧く。といってもこっちが勝手にそう思い込んでいるだけなんだろうけどね。でも、連中の生命の躍動感というのか、そのエネルギッシュなビート、鼓動とこちらのハートとがシンクロするようなリアルな瞬間ってものがやはり、ある。で、ぼくはそんな感覚に浸りつつ、同時に湾岸戦争のロケット映像のような非現実感のことに想いを巡らせたりもした。
↑ ホルムズ海峡にはイルカが多い。徐々に観光に門戸を開き始めているここムサンダム半島では、ドルフィンウォッチングがひとつの観光の売りともなっている。背後から突然現れ、カヤックの周りを飛んだり跳ねたりして遊んでしばらくすると、またどこかに消えてゆく気ままな連中。なお彼らはカメラを向けると姿を消すという性質も持っているようだ。
↑ クムザール沖で見かけた鳥山。でっかいキハダマグロに追われて逃げまとうイワシの群れがこの下にいる。また何度も何度もカヤックの周りでキハダマグロがジャンプするエネルギッシュな姿を見ることができて興奮した。こういう水面の状態を「ボイル」というが、ぼくの心の中でもその躍動感が吹きこぼれるようだった。この写真、クリックしてよく見るとマグロが身体を翻してる姿映っているので見てみてください。
↑ 特にオマーンの軍事基地近くには 物凄い浅瀬までサンゴが展開されている場所が続いていた。
↑ ウミガメにもしょっちゅう出くわした。目があったりもするけれどたいてい「なんなんだこいつ」みたいな顔してノッソリ海の中に帰っていく。
↑ こいつはサメ。と言っても人食いではなく、小魚などを食べて生きているスポテッド・シャーク。海岸ギリギリのきわで、エサをあさっていた。こんなところにサメがいるなんて・・・、「気に入った!!! 」ということでこの浜に上陸し、テントを張って一夜を過ごすことにした。
↑ いろんな荷物が微妙に濡れていたので乾かす。
↑ 砂漠の砂嵐から3,4日たってもまだモヤが消えない。たぶんアラビア海からの海風が入らないとしばらく消えないのだろう。
↑ 広い空間にたったひとり。よく「さみしくないの?」と聞かれるけれど、自然の中にいると、孤独感はあるけれど寂しさ感はほとんどない。それより夜空は凄いし、潮騒はじぶんを包み込んでくれるように気持ちいいし、ウミガメやサメもいるし、うれしいような心地よいような高揚した気分がずっと続く。また夜になるとテントの周りにキツネが寄ってくるのだが、ヘッドライトを照らすと暗闇の中に赤い小さな目が二つ光り、こちらをじーっと見つめる。 そいつを見ているとなんともいえない感情が交錯して、胸がキューンとしてくるのだった。
↑ カヤックで4日も5日も連続して海を旅し、大地で眠っているとやがて、無生物である岩山も生きたもののような存在感を持って感じられ始める。いわゆるひとつのプラネット感覚。