プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

野性のエレガンス

2010-10-13 00:52:48 | インポート
Sd_122

 世の中にはいろんな遊びがあるけれど、シーカヤックほど自然の懐にどっぷり入り込み、裸の感性で野性の息吹に肉薄できるものはないなと、いつも思います。
 何より、水に浮かび波に揺られるという、「快感」の中で実感できるところがいい。
 まあ、スポーツではあるけれど、競技スポーツや体育会的なものとはちょっと違う。「五感をオープンにして全身で自然の脈動と戯れ、一体感を楽しみながら自分自身の生命の躍動を味わう・・・」とかそういうのって、従来の競技スポーツや体育ではクローズアップされないものだからね。
 
 「シーカヤックって何?」って聞かれた時、
 物理的にこうこうこういう乗り物ですとか答えるのは簡単だけど、
 そこから一歩突っ込んで、
 「シーカヤックの魅力を説明してくれ」と言われると、意外とヒジョーに難しい。

 勝ち負けとかフィジカルの鍛錬とかそういうものを目的としてるわけではなく、
 遊園地のアトラクションのように分かりやすいスリルが人間の都合に合わせて並べてあるわけでもなく、。
 「フィーリング」とか「感性」とか、目に見えないところに中身があるわけだからね。
 
 目に見えるテクニックとか道具などももちろん非常に大事な要素だけれど、それらもすべて海に出るための手段というか、絵にとっての額縁のようなものであって、絵そのものはやっぱり「感覚」なわけよ。
 「海フィーリングってやつ」。
 そいつだけは写真にも映らない。

 シーカヤックの魅力を、ぼくは次の4つに分類して意識化するようにしている。
 海って茫漠すぎてつかみどころがない面もあるから、こういうのを意識するってのも大事なんだよね。

 ①レジャー/ レクリエーション 
 忙しい日常から解放されて、肩肘張らず、大自然の中でゆったりのんびりとした時をすごす。
 ②旅、トリップ
 人の入ってこない秘境のような海岸線は全国&世界中いたるところにあって、近郊だろうと遥か遠くの地だろうと、ちょっと漕ぎだしてみると「うわー、こんな場所があったんかいな?」って新しい発見に溢れている。で、水上という非日常空間も相まって、そのトリップ感は普通の観光旅よりもディープなものとなる。風や波や地形を読んで見知らぬ海岸を漕ぎ進むってことはある意味、己の生命でその場所の野性のスピリットと対峙してるわけだから、土地とのある種のきずなっていうか、フレンド感覚っていうのか、ただ表面をかすめただけではない、味のある思い出が心に刻まれる。
 ③カルチャー&アート 
 人間本来の機能として備わっていながらも日常では閉じている五感てやつが海上ではビンビンに開いて研ぎ澄ませるわけだから、同じく感性感覚を研ぎ澄ませ追求した古今東西のカルチャー&アートの描く世界観がより身近にリアル感じられるようになる。また、自然に対する知識とか、いわゆるエコロジーってなんぞやっていうようなところも脳みその知識情報だけではなく、感覚で分かったりする。で、そういうところからひとつの世界観を追求するのが面白い。
 ④チャレンジ、冒険性
 小金を出せばたいていのものが買え、スイッチを押せばいろんなものが意のままに動いてくれる都市生活に慣れきってしまうとだんだんだんだんめんどくさがり屋、横着野郎になってしまう傾向にあるけれど、その対極にあるのが海や自然の世界。海が荒れてきたからといって、押すと波が弱まるリモコンを発明した奴はいないように、人間の思い通りにはなってくれないのが野性の世界。で、そういう厳しさも踏まえたうえで、ちょっとした海峡を横断してみるとかある島を一周するとか、テーマや目標設定しつつ自分に負荷を与えてみると、ふやけたシイタケの裏みたいにしぼんだ心に刺激が与えられ、俄然日常が違って見えてくる。シーカヤックでは、すごい冒険する人もいるし、ほんとにささやなチャレンジをする人もいるけれど、別に勝ち負けはないわけだし己が納得して何かを見いだせたならばどっちでもいい。とにかく人間、マンネリ化した日常を食い破って心に新しい風を吹きこませるにはちょっとハードルを設定したり刺激を与えたりした方がいいわけでそれを昔の人たちはちょっとワイルドな祭りとかで荒ぶる魂を踊らせ昇華したりしたんだけどそんな祭りもない現代、ちょっとした冒険とかチャレンジを自分で見つけてやっちゃった方がおもろい。

 とまあ、なかなかすべては言い表せないけれど、この4つである程度シーカヤックの魅力は語れる。そしてこの4つってバラバラなわけではなくそれぞれが絡み合ったり溶けあったりしてるものだけれど、共通して貫かれてるのは「快感性」ですね。しんどいとかそういう場合ももちろんあるけれど、己の生命で自然の鼓動と戯れるって、根源的な気持ちよさがありますね。

 4つをそれぞれボタンとするならば、海に出たら全部のボタンが「オン」状態になるけれど、そのうえであえて意識的にどのボタンを強く押すかによってニュアンスが変わってきたりします。ま、だいたいの人は忙しいのでその日常の息苦しさから逃れるための「①」のところでとどまっているけど、そこに「②」の意識をちょっとでも加えると、結構味わい深いものになる。また、ストイックに④の要素を追求している人はしばし重々しくなったりしてしまうけれどそこに①の意識を思い出すと、軽やかさが戻る。ちなみにぼくなんかは個人的に、③を強調することによって②が④になるっていうようなところを追求していたりします。つまり、もう既に世界はどこも行きつくされ旅し尽くされているわけで物理的なフロンティアは地球上には残っていないけれど、考えようによっては人間のハートとか感性というものこそ秘境と言うか、まだまだ未開の荒野も広がっていると言えますよね。「真にエキゾチックなのは、自分自身の心である」という言葉がありますように、海とつながった感覚世界から③を追求することによって②が④になる、つまり新たなフロンティアを冒険する、とかそんな意識も持っているわけです。
 感性の世界地図というのか。
 いわゆるひとつのプラネット感覚。

 さてあなたはどんな感じですか?

 まあ、ぼくの場合、①的な要素の強いツアーがメインの仕事となっているわけですが、それの源泉として②、③、④の追求を欠かせないわけです。また①を味わっていただきつつ、その玄関口からより味わい深い②、③、④の中身の世界もちょっとずつお伝えしていければと思って、アイランドストリームをやっています。
 よろしく。
 
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