”今晩の予定は変更する事になった
ジェイクがちょっと鬱気味でなぁ。
ビールと解凍した肉を持ってキャンピング場に来い”
と
土曜の午後
バッキーから連絡が入った。
その日の夜は
野外コンサートに行く予定をしていたので
キャンセルになり
ちょっとガッカリはしたけれど
旅行中も言葉数が少なかったジェイク君が
鬱気味である事も理解出来
”分かった。”
とだけ答え
それ以上の事は電話では訊かなかった。
ジェイク君の気持がふさいでいたのは
半年以上閉店していた店を
開ける事になり
それに対する不安から来ているのだろう
と
勝手に想像していた私は
その原因が
ジェイク君の愛猫キャシュミィアにあると知り驚いた。

野良猫だったキャシュミィアは
ジェイク君に飼われ始めてからも
このキャンピング場を自由に彷徨い
野生の動物を捕まえる愉しみを続け
それらに口をつけてもいた。
”夜も外で過ごす事は当たり前だったキャシュミィアだけど
毎朝ここに帰って来てたんだ。”
と
頭を垂れてジェイク君が話し始めた。
土曜の朝
キャンピングカーに戻って来なかったキャシュミィアの行動を
疑問に思い始めたジェイク君は
彼のキャンピングカーの傍に
ウサギの死体が転がっていた事から
野生のうさぎを捕まえ
それを食べているキャシュミィアを
野生のコヨーテが捕えたのだろう
と
そう思い始めていたようだった。
”キャシュミィアはそれは多くの野生の動物を捕まえては
それらを食べていたから
今回自分の番が回って来たんだ。”
と
云い
”カルマだ”
と
自分を納得でもさせるように呟く。

そう言ったかと思うと
”I need closure"
と
拳をキッチンのカウンターにあて
顔をしかめる。
何だか
いたたまれなくなった私が
”ちょっと散歩してくる。”
と
云って
キャンピングカーを出ると
”キャシミィアを連れて戻って来たら
キミは僕のヒーローだ。”
と
私の背中に向かってジェイク君が叫ぶ。

誰かのキャンピングカーの下や
木々の中に隠れているキャシュミィアの姿を想いながら
”キャシュミィア”
と
呼びかけ
キャンピング場を歩き回ったけれど
どこにも彼女の姿は見られず
いつの間にか私は
キャシュミィアの死骸が
どこかにあるのでは
と
草むらをさぐっていた。
2-30分 歩いたかなぁ
キャンピングカーに戻って
3人で夕飯を頂き
その夜キャンパーを訪れて来た友人と
話をしていると
キャンピングカーのドアの傍に立っていたジェイク君が
突然
”キャッシュ”
と叫び
ドアを開けるや
黒い影がさささと
寝室に向かって動く。

どこにいたのかは
誰にも分からないけど
いつもより半日遅く
キャシュミィア
元気に帰ってきました。

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