「冬の雨」
雨が降りはじめた
雪はざらつくように沈み始め
折れた枝や色褪せてよじれた葉が顔を出していた
雪吊りできなかった私は柄杓で雪の中から銀木犀の枝を掻き出してやる
厚く確りした灰緑色の鋸歯のある葉
まだ汚れぬ雪中の寒を楽しむかのように元気だ
その葉の健やかなる事が嬉しい
思いのまま活動できた今日が嬉しい
降り始めた雨に
濡れる事を厭わずに水を汲む
私は柄杓で軒下の鉢に水を注ぎ回る
積雪を避け寒気の緩みに乾燥し始めたミニバラの鉢々を巡る
葉は萎れ生気なく寒さに打ちひしがれている
日差しの射すことを待ち焦がれ身を震わせるかのようだ
幾つかは駄目かもしれない
思いの物に出会えなかったのは確か
白い雪は銀の雨となりそぼろそぼろと降る
毛糸の帽子は私を雨から守りその衝撃からも私を守っている
夕刻の寒さもしのび寄らず素手の私の手さえ雨を感じることが無い
冬の雨は酷寒の今冬を凌駕してほの温かき灯火となる
内なる蜜柑色の灯火としてぽつりと灯る
私のあなたへの気持ちに似ている