「蜜柑石鹸顛末記」
湯上りの私は帰ってきた息子に石鹸セットをいそいそと見せて言う
「蜜柑にしてみたんだけど…」
息子は照れくさそうに
「どれでもいいよ…」
と言う
ビニールのクリアな中にメロン色した柚子石鹸が美味しそうに丸い
「お菓子じゃないのよ石鹸、柑橘石鹸セットなの…」
…
夕刻下校したての息子の胃の中で菓子セットの夢はシャボンとはじけた
ケーキは即物的なお腹の贅沢
化粧石鹸は幻想的な心の贅沢
母さん何考えてるんだ!
と 息子の心を創造しながら
ポイントを家にもある石鹸の類の一つに変えてしまった
気分 きぶん 文旦 蜜柑 蜜柑石鹸顛末記!