雪は交じりませんが、もの凄い冷え込みでした。
クーラーの風がまともに当たり、鳥肌が立ち震え上がるほどでした。
此処は何処かというと、さ―さんとやって来たカフェです。
待ち合わせの場所からそう遠くない、街中にある、通によく知られたコーヒーショップでした。
店内があまり広くないので満席との事、さ―さんの肩越しに個室なら空いているとお店の人の声が聞こえてきます。
個室って初めて聞きました。どんな部屋何でしょう。
個室でいい?とさ―さんに聞かれて、どんな部屋なのかなと興味を持ちながらこっくりと頷きます。
奥に通されて入ってみると、ああそうなんですね、このお店の応接室のようです。
テーブルにソファー、4人掛けの物が一組置いてあります。
部屋に座って落ち着いて眺めてみると、漸く個室の意味がわかりました。部屋には2人だけです。隔離部屋ですね。
あれーえ、何だか、困った状態にならなければいいんだけど。(既になっているのかも、と思います)
と、車に乗った時点まで遡り、今日の自分を反省します。
後悔先に立たずです。
内心焦りながら平静を装っていると、私を面白そうに眺めているさ―さんの視線に気づきます
悪戯っぽそうな目つきです。きらきらしています。
私は益々用件を早めに済ませて帰ろうと思います。
「あの、名簿なんですけど。」
と私が言うと、あ、そうそうという事で、さ―さんは簡単な用紙によくいうガリ版風の名簿冊子を取り出すと、私の前に差し出しました。
今年の卒業生も載せてあるから、大事に取って置いてね。
そう言われて名簿を手に取り眺めます。
まとめるの大変でね、とさーさんが仰います。そうか自信作なんだ見せるのが楽しみだったのでしょう。
それで悪戯っぽそうな表情だったのだと私は少しほっとします。
まとめるの大変だったでしょうね。と労うと、とても嬉しそうな表情でニコニコされていました。
名簿に目をやり活字を眺めますが、個室という状況です、全然頭に入ってきません。褒め言葉の前に早めに切り上げたいと思います。
では、これでと言おうとすると、さーさんは
「サークルで何か嫌なことがあった?」
と、聞かれるのです。私が全然出て来ないから聞いて欲しいと頼まれたそうです。
無いかといえば有ります。
どちらかというと、正直なところ、皆は私に出てきてもらいたく無いのではないか、と私は感じていました。
元部長さんの一件、らーさんとお余りになってしまった一件、加えて合宿中に向こうの院生から、わざとでは無いでしょうがお尻を触られた件(書いてありませんでしたが)等がありました。
「院生の人に何かされた?」
と言われるので、おさわりを見ていた人がいたのかしらと思います。
物を取ろうとして通路から寝所に当たる畳敷きに身を乗り出していた時です 、話に出た院生の人が私の後ろを通り過ぎて行ったのですが、通りがけにポンと軽くお尻を叩いて行ったのです。
父が娘のお尻をポンと叩くような感じでした。あれ、とびっくり。男子学生と間違えたのかなとも思いました。
でも、間違えたにしても嫌ですよね。バツが悪いものです。向こうも2歩くらい行った所でハッとしたようでした。無言で足早に離れて行かれました。
まあ、そうですね。と、私は詳しくは言わず、ちょっと嫌なことはありましたね。だけに留めました。異性には言い辛い話です。
それより私用で忙しくて、後期はなるべく出るようにします(実は方便)。と言うと、早めに切り上げたいと、寒さに身震いし始めます。
注文のコーヒーが来た時、店の人があまり冷えていない部屋のクーラーを全開にしたらしく、物凄い冷気が後方からやってきます。
時を追うごとにクーラーで体は益々冷え込み、ちょっと寒いから、凄く寒い、非常に寒いに変わり、声さえ震え声、ぶるっと身震いしてしまいます。もうとても我慢できません。
「すみません、凄く寒いんです。…。」
と、今の自分の状態を説明して部屋を出ようとします、が、さーさんは全然寒く無いようです。更に話は進みます。