さて、中に入ると彼が待っていました。
もう呼称を付けます。どう付けたらよいか決まらずここ迄名前無しで来ました。そ―さんでどうでしょうか。
そ―さんもまた静かでした。さ―さんが彼女に確認します。去年の人はこの人で合ってる?彼女はええこの人ですと言います。
じゃあ、と、そ―さんに案内されてテーブルに着きます。私達が腰を下ろすと、そ―さんは店内を奥に入って行きます。後姿が照れ照れでした。
昨年会ったお喋りな彼そのままのようです。
少しするとそ―さんは戻って来て、私達は4人で話し始めました。そ―さんは相変わらずお茶らけていましたが、昨年より落ち着きが出た感じでした。
何を話したかよく覚えていませんが、そーさんも今年海に行っていたそうです。私達が行った日には行かなかったとの事、昨年の日にちまではそーさんも覚えていなかったようです。
私達は昨年の自分達の態度をお詫びして、あの後の電車の中での事を話したりしていました。彼女はここでもどちらかというと静かで、あまり喋りません。そこで、業を煮やした私はせっせと彼女の気持ちをそ―さんに伝えます。出会いから今まで、彼女の言動を伝えて切々と訴えました。
昨年出会った時、私もそ―さんをよいなと思った事、またどこかで逢えたらよいなと思っていた事、そんな私よりはるかに深くそ―さんに思いを寄せている、彼女はきっと会いたい言っていたのだと、彼女の気持ちを訴えたのです。
疲れました。
言いたいことを言って一息ついて、ぼーっとしていると彼女が話し出しました。
気が抜けた私はその時の彼女の話を覚えていませんが、彼女の話が終わるとそ―さんがバイト中という事もあり、私達は早々に引き上げることにしました。
駐車場への道すがら、彼女にも疲れたでしょうと言われて、私はええと、本当に脱力感を感じていました。元々私は丈夫ではなかったので、一気喋りをして相当疲れました。
それでも、彼女が自分で頑張った最後の場面、店前まで送って出てくださったそ―さんに、お友達になってくださいと握手を求めた場面は、今まで静かだっただけに、彼女のどこにこれだけの勇気があったのかとびっくりしました。気にとられた感じでした。
私にとっては脱力感の帰途でしたが、一年間彼女の停滞していた恋に進展があってよかったと思いました。うまく行って欲しいと願っていました。