「今晩地域の会合が有るの。」
彼女の話では、会合で出されるアルコール類で参加者の多くの深酒が予想される事から、このカウの実で翌朝の二日酔い患者対策のカウ・ジュースを搾るということでした。彼女はこの区域の診療所の医師をしていたのです。
「どんな薬より、この実のジュースが1番だから。」
「そうだね、カウのジュースは効くからなぁ。」
ミルは如何にも実感したという風に嘆息するとクククと笑いました。彼自身も数日前この実のお陰で元気を回復したのですから、当然といえば当然の反応でした。自分も帰省パーテイでお世話になったよと笑いながら彼女にその時の様子を話し出しました。
「翌日の頭痛と来たら、それはもう散々だったよ。」
ミル達は夕焼けに染まり始めた空の下、急ぎながらも和やかに2人で山道を下って行きました。
「そう言えば結婚したんだってね。」
おめでとうと、ミルは彼女を祝福しました。彼女は明るく笑うと、屈託なく微笑みました。そして、「驚いたんでしょう。」と彼の図星を突きました。確かにと答える彼に、彼女は夢見るような瞳になると、実は私はミルの事も好きだったのよと告白するのでした。
「あなたも気が付いていたんでしょう?」
『確かにそうだ。』ミルは思います。彼の脳裏にはこの星にいた頃の事が走馬灯のように浮かびました。同期では最も成績優秀な2人です。共に皆の代表となり委員活動をする事が多く、その分共に過ごす時間も多かった2人でした。