ドクター・マルは1人自室で休みながら、紫苑さんの言葉や自身の結婚生活、過去の故郷での出来事等について考えていました。するとスーやウーの顔が浮かんできます。
『スーもそうだが、結果としては姿を見るのも嫌になって仕舞ったけれど、スーだって最初はとても心時めいた女性だった。』
彼はこう思うと、あんなに毛嫌いしていたウーにだって、多分によい所があったのだろうなと思いました。何しろ、エンと気が合って上手く結婚生活を送っていたんだから、子供だって子沢山だ、幸せな結婚生活だったのだろうな、エンは。
マルは何だか自分が酷く孤独に思えてきました。
『1度くらい故郷に帰ればよかったかな。』
義理の兄妹になれば、またウーとも違った視点でお互いの関係が築けたかもしれない。そんな風にも考えてみたりします。思えば、ウーの子共達といってもエンの子供達だ。自分にとってはやはり血続きの親戚にあたるんだ。マルは自分の身内の子供達、自分とエンのような境遇に生まれたピーとマーの双子の姉妹について思い遣り始めました。
すると、艦内のパーラーで初めて会った時の2人の顔が浮かんできました。エンの子供達か、スーと私には子が無かったなぁ。そんな事も考えてみます。私達の間に子供が出来たら、どんな顔をした子が生まれたんだろうかと、マルはスーの顔、双子の姪の顔から想像してみます。
『女の子なら、美人だったかもしれないなぁ。』
子供がいたら、案外楽しかったかもしれない。彼はそんな事を考えて来ると、姪姉妹を引き取っても良いかなと思い始めました。そして、彼女達の母であるウーのきつい顔を再び思い浮かべると、彼はハーっと溜息を吐きました。
「如何にも、如何にもこればかりは妥協できない。」
どうしてもウーの事が心に引っかかり、自分の弟の子供達、自分の姪に当たる2人の姉妹が、自身の未来に相当重荷に感じられてきます。マルは引き取った方が姪2人の為だと理解しながら、一方ではどうにもならない自身の感情の抵抗を感じるのでした。
「マルのじれんま」 終り