私は、自分の布団でこのまま昼寝をしてしまおうと決め込んで、仰向けになると両手両足を伸ばして、ぐーっと伸びをするとほっとリラックスした。心身共に安らいだ事を感じつつ落ち着いて目を閉じた。私の瞳に映っていた天井の曲線達は暗闇に閉ざされた。
「おい、こんな時間に寝るのかい。」
父の声が間近でした。うん?と思ったが、私は目を開けずに寝入る準備をしたままだった。
「昼寝の時間には未だ大分早いんじゃないのか。」
確かに父の声だ。しかも2階のこの部屋にいる様子だ。私のいる場所から間近な位置で父の声は発せられている、ようだ。如何やら真実、これは夢では無いようだ。そう感じて、私はまだ起きているようだと自身の状態を確認してみる。
そうっと目を開ける、先ず天井の模様が目の前に有った。これは今し方見ていた光景と同じだ。それから視線をゆっくりずらしていく、父の声がしたと思しき辺りが視界に入って来ると、そこにはやはり父の立ち姿が有った。
私は顔を上げて、お父さんと言うと、来たの?と尋ねた。父はああとだけ相槌を打つと、こんな場合何時も彼が行う様な事、私の具合を見る為近付いて来て私の顔を間近に覗き込む事や、私の額に手を遣って熱を推し量るという様な事をしなかった。
首が疲れた私が寝たままの姿勢でトンと頭を布団に下ろすと、私の視界に入った父の姿は小さく成った様に見え、私から離れて見えた。その上彼の上半身の白いシャツ姿と頭だけしか見えなくなった。
そんな父の様子を私が注意して観察し出すと、父の顔は私を見ておらず、私から背けられた横顔のみが見える。私は普段と違う父の様子にやや違和感を覚えたが、何思うという様な、この場に合点する考えが何も浮かんで来なかった。私は唯、如何したの?とだけ彼に声を掛けた。そんな私に父は暫く無言でいた。