Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 4

2020-07-02 10:13:18 | 日記
 次の日、か、その次の日。私は2階の私達親子の寝室にいたが、階下の喧騒に気付いた。何だろうあの声は?。そう思いながら目に映る天上の年輪を眺めていた。その内意識がはっきりしてくると、私は階下の声が祖母と母の物だと気付いた。

 何かしら?。何だか喧嘩しているような気がする。私には何方かの、または両方の荒げた声が聞こえたように感じたからだ。そこで私は身を起こして、よくよく耳を澄ますと彼女達の話の内容にも注意を向けた。

 「じゃあ、そういう事で。いいですね。」

祖母の声がして、続いて彼女の後は宜しくの声が聞こえると、階下では祖母が立去る気配がした。私はそろりと半身を起こすと、まだ自分の耳に注意を寄せていたが、階下では物音一つせず静かになった。母が立去った気配はなかったがと、私は座り込んで考えていたが、取り敢えず昼寝を終えて、今まで自分が寝ていた布団から起き出すことにした。

 気付くと私は何も被らせられずに寝込んでいた。してみると、母は私が寝込んだ後何も被せず昼寝させていたのだな、と思った私は、何となく自身が粗雑に扱われた様な屈辱感と、家族の中から自分が外された様な孤立感を味わった。ぐっと胃の腑に掛かる暗い圧迫感、自身の気持ちの落ち込みを感じた。

 こんな事で…、こんな事で負けてないぞ!。自分の人生は未だ始まったばかりじゃないか。『ふん!』と私は思い、ぐいっと顎を上げると明るい障子の向こう、窓の辺りに目を注ぎ、よいせ!とばかりに勢いをつけて自身の敷布団から立ち上がった。私はこの勢いの儘、未だ母がいるであろう、そうであればきっと面倒事が待ち受けているであろう、多分にその目算が高い階下の部屋に降りるべく、努めて元気に階上を普段仕様の足並みで歩き出した。