Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 13

2020-07-15 10:59:37 | 日記
 この時、祖父の考えている事、及び私の勘違いをきちんと把握していて、尚且つ自身の気持ちを通す事が出来、そう出来た事を有難いと思いながらホッとして内心喜んでいたのが、座敷に到達していた祖母だった。

 2階に到達した私の方は、菓子が貰えず侘しい気分に陥りそうになる所を振り切って、菓子を諦めさっぱりとした気持ちでいたつもりだったが、ここ階上直ぐの洋間の床を踏みしめて歩いてみると、何やらむかむかと怒りの感情が湧いて来るのだった。

 やはり祖母は私に意地悪をしたのではないか、そんな考えが頭をもたげて来る。結局私はいい様に揶揄われただけなのだ。お菓子にしても最初から無かったのかもしれない。そんな考えが頭に浮かんで来て、私は思わずは~っと大きな溜息を吐いた。

 何だか疲労感を覚えた私は、よろよろと寝室に延べられている筈の布団に向かった。そこへ突っ伏し様と思ったのだ。次の間の入り口に立った私は和室の部屋の中を覗き込んだ。

 「あれ?、」、無い!。何時もある筈の所に布団が敷かれてない。目を丸くして室内を眺めると、私達親子の寝室の間はすっきりと広く開けていて、明るい畳の目が整然と広がっていた。

「もう!。」

私は振り返り数歩戻ると、何時も布団が積み重ねてある場所に立った。そしてその重なった布団の一番上にある子供布団に手を伸ばすと、ええいと掛け声を掛けて力を込め、敷布団を引き落とした。この結果、整然と整頓された布団の積み重ねの枡形が歪に崩れた。が、私はいいやと無頓着だった。何時もなら、親のこういった行為の産物に危害を加えるという事に到底無頓着ではいられなかった私だった。

 『あー、何だか腹の立つ。』。私は気持ちの儘に自分の布団を引きずって歩くと、寝室の何時もの自分の定位置にその敷布団を勢いよくぱぱっと広げた。寝よう寝よう、私は徐にぼんとその上に突っ伏した。「面白くないったら。」そう言うとバタバタと自分の四肢を布団の上でばたつかせた。 

うの華3 12

2020-07-15 10:02:54 | 日記
 この時、私は祖母の気持ちもまた見通す事が出来無いでいた。そして、その事に全く気付いていなかった。傍に伏したまま身動きしないでいる父についても、一向にお留守の状態となっていた。そしてその事にも全く気付いていなかった。

 祖母はふーんという感じでこの部屋から続く座敷の方を眺めていた。障子襖は半分しか開いておらず、襖の陰になって中に人が誰かいるのかどうかも私には分からなかった。その後、祖母は考えていたが、お前が使うというのなら、それでもいいかもしれないと呟くように言った。これは、いよいよ彼女が出し惜しみしている旨い菓子が口に入りそうだと私はほくほくした。

 そんな私の含み笑いの様子に、祖母は嫌悪感を覚えた顔付をしたが黙っていた。暫くの後に、じゃあこれはここに置くからねと、祖母は言うと、

「智ちゃん、一寸あっちを向いておくれね。」

と私に頼んだ。

 私が反対に向きを変えて祖母から視線を外すと、漸く私の視界に四つん這いの父の姿が入り、私は彼や祖母と共にこの部屋にいた事を自覚した。『あ、あれ?、そう言えば父が部屋にいたな。』、私は思った。私は咄嗟に、この部屋に入った一番最初の時の事を思い返した。確かに父はその時からここにいたのだ。何故私は父の存在を忘れていたのだろう?。ふとそんな事を考えた。

 「じゃぁ、ここに置いたからね。」

祖母の声に私は振り返った。彼女は階段に身を寄せていたが、直ぐにその場から離れて座敷へと向きを変えた。

「後はお前に頼んだよ。」

お前がそうしたいと言ったんだからね、お祖母ちゃんが頼んだ訳じゃないからね。等と彼女は言うと、吹っ切れた様にスタスタと、素早く座敷に向かって足を運び部屋の中へと消え失せてしまった。

 中には祖父がいたらしい。祖父の声で、お前帰って来たのかい、あの子に任せたのかい、いいのかい、等。あの子は考え違いをしているんじゃないのかい。という声が私の耳に聞こえた。

「考え違いというより…。」

祖母は言った。「勘違いです。あの子は勘違いしているのでしょう。」。

 私は祖母がその場を離れるや否や、待ってましたとばかりに階段に飛びつく所を、それではあまりに意地汚いかと思い、ややその場で逡巡していた。が、頃合いを見て、もう良かろうとすすいっと階段に進み寄った。踏み板のそれと思しき辺りを笑顔で見詰めてみる。

 おやっ?。そこには何も見当たらないのだ。電球の点けられていない室内は日中でもやや暗かったが、板の張られている階段だ、しかも階段の背側が光線の取り入れられる方向である、踏み板、及びその奥に当たる場所は尚更に陰になり暗かった。暗くて目に入らないのだろうか?。私はその暗く沈んだの奥の空間に手を差し伸べてみる、左右に掌を振っても指に触れて来る物は何もなかった。『?。』…。

 私は空気のようなお菓子がこの世に有るのだろうかと考えてみたが、祖母の持っていた菓子が何なのか、又は何故置かれた筈の祖母の菓子が忽然と階段から消え失せたのか、その謎を解く事が出来無いでいた。祖母が意地悪く私に肩透かしを食らわせたのだろうか!。とも一瞬閃いてみたが、あの生真面目な祖母が孫の私にそんな仕打ちをするとは、到底考えられないと直ぐに考え直した。

 と、そうこう考え込んでいる内にも、私は期待していた菓子が手に入らず意気消沈して来た。階段の陰で暗い気持ちの淵に沈み込みそうになった。そこで私はそうと気付くと発起した。そんな暗い気分に陥るまいとぐいっと自身の片足を上げた。次には顔を上げると2階の入り口を見た。私は威勢よく目の前の階段に足を踏み下ろした。そして思い切りよく消えた菓子の事は忘れて、そのままふんとばかりに勢いをつけてだんだんと足音も軽く力強く階段を上って行った。そんな私の念頭には、父の事ももう無かった。
 


 


今日の思い出を振り返ってみる

2020-07-15 09:50:41 | 日記

うの華 15

 その日2人は連れだって、私の父が言ったように寺へとやって来た。何も言わなくても、史君と私は申し合わせたように墓所へと足を向けた。何時もの場所に差し掛かると、果たして住職さんがその......
現在は曇り。1日雨の予報でした。午後は雷雨の所もあるそうでしたから、この晴れ間を大切にしたいです。
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