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Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 42

2020-09-24 09:57:18 | 日記
 教えられないね。いくら孫のお前でも。そんな言葉を小さく呟くように口にしながら、それでも彼女の瞳は笑っていた。

「皆聞きたがるんだけどね…、この事は人に言うなとあの人からも口止めされているし…。」

祖母はふっと視線を落とすと表情を曇らせた。彼女は何かを思い出したのだろう、その後空間に目を戻して遠い所を見る様な面差しに変わった。

「それに、この話をした時はあの子も気に入らない様子だったし。」

祖母はポツリと言った。

 ここに住めてあの子は嬉しがっていたけれど…。祖母は思い出に浸り始めたのだろう、傍にいる私に語り掛けるというより、独り言の様な話し方に変わっていた。

 他の子達だって、この家は気に入っていたのに。私の話を聞くとそっぽを向いたりして。中には怒りだす子もいてね。如何いう物だか、こっちの苦労も知らないで。

 彼女の言葉が途切れると、祖母は私に背を向けるようにして2階の廊下に目を遣った。その向こうには古び崩れかけて来た土壁が見え、私達の住む家の剥き出しになった内部が見えた。壁には年代物の木の窓枠と、その窓にはめ込まれた曇りガラスが見える。私は祖母の視線を追うと、切子模様の細かな突起が施された部分を持つ窓を見詰めた。いいや、祖母にすると彼女の瞳に投影していたのは、ガラスの向こうから差し込んで来る太陽光の明るい光に透けて見える様な、往時の往来の懐かしい光景だったのかもしれない。

うの華3 41

2020-09-24 09:22:22 | 日記
 私は彼女の言わんとする所が直ぐには飲み込めなかった。が、今の会話の内、彼女の最初の言葉に「がめつい」という言葉があったという事に思い当たると、お前というのは私のことなのだから、祖母は私ががめついと言ったのだ、という事にすぐ考えが及んだ。すると、それは酷いんじゃないかなと感じた。私は眉間に皺を寄せて一応憤慨した。私にしてみると、単純に祖母である彼女を喜ばせようとしただけなのだ。

 そうやって、祖母に一応の不快感を表しながら私は尚も考えていた。祖母が口にした事、私に取って計り知れない事柄。女性が持つ大金に付いてだ。全く私が未知の分野のこの世の出来事。一体それは如何いった類のお金なのだろうか?。
 祖母は家事以外で、今はその家事も私の母が大半を担っているけれど、さして仕事もしていない様子だ。その祖母が如何やって大金を稼いだのだろう。お金を得るからには彼女はそれなりの仕事をしている筈だ。私の考えはそうだった。
 祖母には仕事が無さそうなのに、大金が有るというのだ。彼女所有のお金が有る事自体、私には不思議な事柄だった。私はそういった事実について、これから私の質問する言葉に返答するだろう彼女の件に大いに興味があった。大枚を持つと放言する女性の、ほんの些細な仕草に迄も大いなる関心があった。私は自身の心眼で確りと目の前の女性を捉えようとしていた。

「お祖母ちゃん、どうやってお金を稼いだの?。」

ほれほれ、それごらん、これだからね。祖母は口元から笑みと言葉を漏らした。金儲けの秘訣を、誰でも、どの子でも、聞きたがるんだよ。ほくそ笑むような笑みを口元に湛え、彼女の目には穏やかな光が宿った。そうして孫の私を慈しむような瞳で見つめると、彼女は前掛けの前で手を組み直した。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-09-24 09:04:45 | 日記

うの華 56

 気落ちしていた私に向けて祖母が掛けた言葉中に、自分はただぼんやりはしているのでは無い、絶えず何かは考えている。そう受け取れる言い回しが有ると私が感じた事が私の癇に触れたのは確かだ......

 今日のお天気は晴れ。雲が多いです。今夜半には雨に変わるようです。

 さて、先週からのシルバーウイーク、家では連休のんびりしていました。それでも秋のお彼岸には、墓参りに行こうか如何しようかと迷いました。結局行かず仕舞いです。今年は春のお彼岸以降、旧盆の7月にひっそりと家のお花を供えに行ったきりです。新型コロナで母の外出もままならず、墓参に訪れずに過ぎ父が寂しがっているかもしれません。
 こんな感じですから、家はあっという間に1年が、新型コロナの渦に飲み込まれて過ぎてしまう気配です。夜ごとコオロギの鳴き声も響き、お彼岸を過ぎるとやはり涼しくなりますね。