Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ジェネレーションギャップ

2025-01-11 10:40:50 | 日記
 帰ろう…、祖父が言うので、私はハッとしました。私は祖父の背を見ながら彼に着いて歩き始めました。そうして歩きながら、先程までの彼の物思いであろう祖母の事について考えていました。

 「もう帰ろう。夕刻だ。」

じきに暗くなってしまう、夜の墓地は嫌だろう。誰に言うとも無く祖父は言うと、歩を止め私に向き直り、そっと微笑みました。私は祖父の顔を探るように見上げていました。また家の事で何かを言われるのではないか、そんな事が胸を過りました。祖父はそんな私に構わず皆の所へ戻り掛けて、又歩を止めました。そして、お前今何を考えていたのだ、と、私に再び問い掛けて来ました。私が正直に話したものか如何かと案じていると、祖父はそれを察してか帰りを急ぐからもう余計な話はしないと言うのでした。

 私はホッとして祖父に歩み寄りました。祖父は私より先に歩き掛け、それでも又私に振り返ると、それで一体、お前はさっきから此処で何を熱心に考えていたんだい、と質問を繰り返して来ました。ふふふ、と、何やら面白そうな祖父の笑顔でした。お前は面白いところがある子だからな。祖父にそう言われると、私も何やら愉快な気分になりました。そこで私は自身の内緒話を話す様にほくそ笑むと、祖父母の謎について考えていた事を打ち明けました。何だそんな事かと、祖父にとって意外な事に私が熱中していた物だと、彼はあからさまに興醒めした顔になりました。そんな事、下らない、祖父は芯からそう言うと、失望した顔付きで俯き、暫く言葉を選んでいたようでした。

 子供というのは、いや、お前という者は、下らないというか、碌でもない事を考える物だ。そう言うと、明らかに不機嫌な様子を見せました。私は祖父が何故怒るのか理解出来ませんでした。物事深く考える、その行為は良い事ではないのかと、彼が怒る理由に合点がいかないのでした。

 「女というのはこれだから、子供でさえこうだ。」そんな事を言って、祖父は妙に不機嫌になるのでした。私とあれの違いなど、一目瞭然だ。そんな見てくれ如何でも良いでは無いか。そんな事を言い捨てると、祖父はプリプリ、押さえていた怒りが遂に顕になって来ました。その勢いに私は叱られると思わず首を縮こめました。すると祖父は、まぁお前を叱ったりしないと、私の前から身を翻すと、スタスタと足速に私の両親が墓参している場所迄行き、彼は二人に何やら話す素振りとなりました。私がその様子を覗ってみると、物言う祖父に父はそう動じた様子も無く、幼少期から彼等の口論を何度と無く見て来た私には、彼等父子の勢力の均衡が崩れ、祖父の家長としての威光が衰退しつつある事を感じたのでした。