「旅に出て間もないです。20○○年から来ました。」
あくまで控え目に、にこやかな笑顔で光君は男性に答えます。彼には男性の問いかけの言葉から、ここが本来の自分達の時空より未来である事が分かって来ました。実は、彼にとってこのような場面は最初ではなかったのです。
「過去には研究費にご寄付を頂き誠にありがとうございました。」
そのように、光君は丁寧にお礼の言葉を述べました。この言葉に男性はニヤリと笑い顔になりました。そうして、それから少し彼は俯いて考えていましが、再び顔を上げた時には酷く暗い顔色で、顔には濃い影が差していました。目には鋭い険が立っていました。そして彼は、一旦ここまで近付いた2人の前から後ずさると、矢庭に背中の筒から1本の矢を抜き取り、彼の手の弓に番えました。鈍く光る鏃の先は、ぴたりと光君の左胸に照準が合わされました。彼は弓の名手の様です。
「出て行ってもらおう。」
「一刻も早くこの私達の世界から立ち去ってもらおう。」
彼はそう言うと弓を構えたまま微動だにしません。ジーッと相手の出方を窺っています。彼のその迫力は鬼気迫る物が有りました。おかげで光君達は一刻の猶予を感じる事も無く、この世界から姿を消す羽目になったのでした。
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