祖父の心配はもっともな事でした。その時です、ヒューっと風を切り裂く音がしたと思うと、2人の目の前、4、50㎝ほどの場所、土の上にぶすり!と矢が垂直に突き刺さりました。
『やっぱりか』、と光君は思い、矢が飛んで来たと思しき森の奥に向かって、両手を口にかざすと大声で怒鳴り始めました。
「僕達は怪しいものじゃありません。道に迷った旅のものです。遠い東の国から来ました。」
彼の言葉に、森の中から何やら返事がありました。そしてかぽかぽと蹄の音が聞こえて来たかと思うと、森の中から一頭の馬に乗った男性の姿が現れました。どうやら西洋人の様です。
『ロビンフッドかしら?』
背中の矢筒と手には弓と小手という出で立ちに、祖父は有名な森の英雄を思い浮かべましたが、その時、祖父の言葉が聞こえたかの様に光君は、そんな有名人じゃないからと口にするのでした。光君はフフフと笑うと、
「この土地の御領主様だよ」
と祖父に説明するのでした。
「 前にこの世界と似た様な世界に出た事があったじゃ無いか。」
そう光君が言うと、祖父は酷く面食らいました。
「え!、初めてじゃないか、この世界は?、私にはそんな記憶はないよ。」
実際、この祖父にはその様な記憶が確かに無かったのでした。
光君はそーっと横目で傍の祖父の顔つきを眺め始めました。その時です、
「何者だ。 」
馬上の男性が厳めしく声を掛けてきました。
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