さぁ、と、知らない子が言えば、どこそこの誰だという者もいて、聞いた指導者の子はやや驚いて、真面目な顔をして考え込んでみるのでした。「ああいう家の子は、小さくでも大丈夫な場合があるんだな。」そんな事を独り言のように呟いていると、あそこの家はもう辞めたのだと声を発する者がいました。そこで彼はまた考え込むのでした。『辞めた、という事は家の職業は関係ないのだろうか?』そんなことを考えている内にグループの中にいた妹の表情に気付きました。
喜々とした目をして皆の中にいる彼の妹は、私の目の前にいてああするのだと呟いていた少女でした。彼は妹がこの場所を嫌っている事は以前から知っていました。彼女がコッソリ呟いた言葉も、彼が普段聞き知っている声だけに聞き逃しませんでした。そこで早めに一言妹に注意しておこうと考えました。彼は真面目な顔をすると
「家はダメだからな。」
と皆の前でしたが、真顔で妹に駄目出しするのでした。「家は普通の家だから、お前だとあゝは行かないからね。」酷い目に遭うから止めなさい。そう言うと、再びリーダーは皆に背を向けました。
「あの子達はお茶屋の子だからね。」と面白そうに言う言葉が聞こえました。その声に合点した子は、ああ、へぇ、道理で等の声を漏らしました。「だからうまく…、」逃げ出せたとも言えません、此処で指導者は口籠ると言葉を切りました。『だから、だから…』
「だからうまくいったように見えるけどね。」
そう言ってにんまりと笑って見せました。この後はどうなるか分からない、上手く行かないかもしれないという含みを、言葉の中に持たせてみたのでした。
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