Jun日記(さと さとみの世界)

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マルのじれんま 37

2020-06-01 12:35:36 | 日記
 「へー。」、これはまた何と豪勢な、と、彼は呟きました。

 外は雨が止み、また日差しが戻って来たようです。風呂場の窓に庭の木漏れ日の陰が映り、明るい日差しがさしこんで来て浴槽内の湯気が晒し出されると、ほんわかとして目に心地よい空間が醸し出されてきます。紫苑さんは湯治にでも来た気分になりました。好きかな好き哉、彼は呟くと顔に満面の笑みを浮かべました。

 「如何です、伯父様、万事抜かりはないでしょう。」

やや興奮気味に目を輝かせてシルがマルに言いました。マルは苦笑いしながら、伯父様ね、と答えます。

「そういう設定になっているんだね。自分で考えたの?」

彼はシルに問い掛けました。シルはにんまりとすると、まぁそうですと答えました。外見からすると、その設定が無難だと思ったのだと彼女は説明しました。その後、彼女はマルに彼と紫苑さん2人の着替え、浴衣と帯など渡しました。

「バスタオルと手拭いは風呂場に用意してあります。地球人の衣服は脱衣場に有るシューターにドクターが放り込んでください。」

彼女はそう言うと、後程ミルも此処、地球への前哨基地へ来る予定だと告げました。

「前哨基地か。」

マルは再び苦笑いしました。地球人と戦うなんて事にならないとよいのだけどね。そういうマルに、シルはきょとんとした顔をして言いました。

「異星人と戦うような星人なんですか、地球人は?。」

と。するとマルは思い出した様にぶるっと身震いしました。彼はシルに向かうと顔をしかめてこう言いました。

「そんな事は無いと思うんだがね、何しろこの星の魚という小動物を捕まえて食べる様な人種だからね。」

 マルが浴衣を携えて、時々溜息を吐きながら廊下の先の湯殿に消えると、それまで涼しい顔をしていたシルはくすっと笑いました。「私の星でも水中に住む小動物はご馳走で、今でも狩りをして食べているけど。」。こう呟きながら、そうじゃない星も宇宙には数多にある事をシルは知っていました。

「ま、私の星も変わっているけどね。」

彼女はツンと取り澄ました顔付をすると、姿勢をしゃんとさせて次の任務に取り掛かるべく行動を始めました。


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