如何したんだろう?
ミルは思う。
今日の元教授はおかしかったなと思うのである。
確かに風邪を引いたとは言っていたけれど、何となく妙だった気がする。
それとも、変だったのはあの挨拶文のせいなんだろうか。
ミルは首を傾げる。
自分では良い出来だと思ったのだが、やはり地球人にすると何か変なんだろうか。
ここまで万事うまく行っていたと思ったのだが、何だか一抹の不安を覚えるミルであった。
こういう時は上官であるチルに相談するに限る。
ミルは宇宙船に戻ると、即チルの部屋を訪ねた。
「交際申し込みの時の挨拶文を作成しましたが、これで良いかどうか確認していただけますか。」
うむ、とチルは快く直ぐに応じてくれた。
早速チルの目の前で文を読み上げるミル。今までかなり練習しただけに、堂々とした物言いである。
チルはほぅという感じだった。
が、ミルの隙を見てニヤリとした。
「ま、それで良いんじゃないか。」
にこやかにチルにそう言われて、漸くホッとしたミルである。
どうも教授に感じた違和感は杞憂であったようだ。
知性派のチルに確認してもらい、本当に良かったと思う。
これで自信が持てたミルである。いよいよ明日は本番だ。
ミルは何だかドキドキして来た。
これで万事事無しと、ミルが部屋から出て行くと、チルはまたにやりとした。
さてさて、ミルにはああ言ったもののとチルは思う。
少々時代ずれしているんじゃないか、と呟くと苦笑してしまう。
まあ、こっちで何とかしておいてやろう。そう言うと早速準備にかかった。
ここは地上の初子の家、電話のベルが鳴る。
何時もの様に初子の父が受話器を取る。
「ああ、はいはい鷹夫君のお祖父さんでしたね、」
初子の父は丁寧に応じる。
富士雄を目上の人と思うと尊敬の念が湧くし、孫の為に一肌脱いでいる祖父と思うと、労りの気持ちも湧いてくる。
お元気ですか?お幾つになられますか?と、愛想よく話をつなげる。
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