「そんなに気を使う事は無いんじゃないか。」
副長のチルの言葉に、下士官のミルは、そうはいってもと不服そうに言葉を返しました。
ここは宇宙船の自由研究室。宇宙船の全ての乗組員がその勤務の空き時間に、思い思いの研究が自由に出来るようになっている場所です。ミルは今、やはり自分の自由時間を使って地球人の男性から紹介された本を手に、その本の中に書かれていた1つの実験をしようとしているところでした。彼は勤務時間外の気楽さで副長のチルに話し出しました。
「僕の学問の手助けをしてくれると言うんです。」
へーっと、副長のチルは半ば呆れ返って嘆息の声を出しました。
「だってお前、そんな本の内容なんかとっくのとうの昔に理解できているだろう。」
今更そんな幼い科学や物理の本なんか見てどうするんだい。いかにも時間の無駄じゃないか。そう言うチルに、ミルは言葉を返しました。
「幾ら初歩的な知識だと言っても、この本返って結構難しいんですよ。」
それに案外面白いし。今は廃れてしまった学説なんかが載っていて、その間違った思考の発展もそうだなぁと頷けるものが有ったりして、念のために実験して検証しようかなと…。そんな事をチルに穏やかな笑顔でミルは語り続けます。
「そんな事より本来の任務、地球人女性との交際はどうなったんだい。」
チルはミルの言葉を遮ります。
「早々に結果を出して、リポートにまとめてくれないか。」
艦長だってミルの方の進行具合は如何なったのかと、僕の方に問い合わせが来るんだからね。副長のチルは表情を引き締めると、やや怖い顔をミルに向けて上官らしく下士官のミルに語調を強めて注意したのでした。
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