事典から離れて、少し日常を過ごして、ふとまた事典の事を思いだして、
どっさりと畳に本を置き眺めてみると、やはり好きな項目を捲ってしまいます。
『私って、やっぱりこれらが好きなのね。』
そう思い目に映るのはピラミッド、スフィンクス、ツタンカーメン王のマスク、
宇宙、天体、アンドロメダ座の写真、
原子、電子のモデル図、化学記号表、などでした。
ミクロもマクロも計り知れず、とても不思議で興味深いのでした。
また、悠久の時や、人の造形物、過去や未来など、歴史的建造物。
物質が様々に変化する科学、特に化学など、美しい生物の世界も興味深いのでした。
複眼のトンボの目など、現実に見るくるくると動く丸い目が可愛いと、
枝先などに止まっているトンボの顔をそーっと眺めたりするのでした。
さて、トンボの目玉が可愛いからと、私がいくら大好きだからと言ったとしても、
何百何千のトンボの目玉だけをもらうよりも、
1枚のトンボのポートレートの写真をもらった方が、とても嬉しいのは当たり前です。
皆さん、この感覚の違いが分かりますよね。
違うかもしれませんが、当時全く気が付きませんでしたが、
ある日Fさん(どうもEさんが、順当だったようです。しょうが無いのでこのままです。)が、
私に黒い仁丹のようなものがいっぱい詰まったフイルムケースを見せてくれます。
「これなんだと思う?」
さあ、仁丹みたいね、でも、形がまん丸じゃないものもあるし、色も黒くない物があるし、と、
私は手にもらってフイルムケースを覗き込んでみます。
さっぱり分かりません。
仁丹なら食べられるけど、まさか、「○○の胃」みたいな腹痛のお薬?かなぁ。
等話し合います。
Junさんの好きな物だっていうんだけど、分かる?
分からない、全然、さっぱり、と私。
そんな話をFさんとしたものです。
全く解決しない話し合いに、Fさんは、それJunさん要らないなら私が貰っていい?と聞くので、いいよと答えます。
それくれた人も…貰っていい?と、此処はFさん、何だか小声で遠慮がちでした。
さっぱり訳がわかりませんでしたが、私にはこの時何だか惜しい気持ちが湧いてきました。
フイルムケースの方ではありません。
『人?』
何でしょうか?何だか引っかかる物言いだと思いました。
でも、訳の分からないままに、何だか人の使いをして回っているようなFさんを気の毒に思い、そのご苦労を労いたくなりました。
いいよと私は答えます。
「フイルムケースの方も、何でも、Fさん好きなら持って行っていいよ。」