職場のSさんから雑誌「amarena」(1/7売り2・3月合併号)を貰った。
巻頭からパラパラとページをめくっていると、見慣れた(?)バロック絵画が登場。それも渋く、ボローニャ派のグイド・カニャッチ(Guido Cagnacci,1601-1682)《マグダラのマリアの空中浮揚》とは...。女性誌に登場する画家としてはかなりマニアックだ。
解説をよく読むと、何と岡田温司氏による<西洋美術の秘密>と題する連載記事だった。なるほど! なにしろ氏は『マグダラのマリア-エロスとアガペーの聖女』(中央公論新書)の著者でもあるのだから。あ、もちろん『カラヴァッジョ鑑』の編者でもいらっしゃるけど(^^;
グイド・カニャッチ《マグダラのマリアの空中浮揚》(1640年ごろ)
アルテピナコテーク(ミュンヘン)
氏は『マグダラのマリア』の中で、カニャッチのピッティ宮パラティーナ美術館所蔵作品を紹介していたが、今回の掲載ではアルテピナコテーク所蔵作品を紹介している。ということは、カニャッチは同主題作品を2枚描いているということだろうか?
さて、《マグダラのマリアの空中浮揚》は『黄金伝説』に由来するテーマで、プロヴァンスで苦行中に天使の力を借りて浮揚するという神秘体験シーンを描いたもの。岡田氏は、少年のような天使がマグダラに押さえつけられているように見えるところから、後世のファム・ファタールの先取りのようだと述べられている。確かに少年天使は重く苦しそうに抱えている。かなり無理な姿勢を強いられているものね。表情は良く見えないけれど、うむ、マゾっ気のある天使なのかも(笑)
マグダラのマリアは元娼婦だったともされているが、「敬虔にして官能的、純潔にしてふしだら」という両義的イメージを持つマグダラを描くのにカニャッチの右に出る者はいないとのこと。そう言えば、『マグダラのマリア』の中でも官能的な香のするカニャッチ作品が多く紹介されている。
で、思い出したのだが、カポディモンテ美術館で同じボローニャ派のランフランコ(Giovanni Lanfranco, 1582-1647)による同主題作品を観たことがある。ということで、ボローニャ派の浮揚の系譜があるんじゃないか?と思い立ち、好奇心でつい辿ってみた。
ドメニッキーノ(Domenichino 1581-1641)やグイド・レーニ(Guido Reni 1575 - 1642)、更にアンニバレ・カラッチ(Annibale Carraci 1560-1609)まで遡ると、なんだか微妙な影響関係が見えてくるような気がした。もちろんマグダラのマリアの「浮揚」と聖母の「被昇天」は意味的に違うけど、構図的にかなり興味深い。
アンニバレ・カラッチ《聖母被昇天》(1600-01) グイド・レーニ《聖母被昇天》(1642年)
聖ポポロ教会 チェラージ礼拝堂(ローマ) アルテピナコテーク(ミュンヘン)
ドメニッキーノ《マグダラのマリアの空中浮揚》(1620年) ランフランコ《マグダラのマリアの空中浮揚》(1616年)
エルミタージュ美術館(ペテルブルグ) カポディモンテ美術館(ナポリ)
美術ド素人が好奇心のままに並べただけだが、多分アンニバレはティツィアーノのフラーリ《聖母被昇天》を観ているだろうし、カラッチ一族のアカデミーで学び、アンニバレと共に仕事をした画家たちも、何だかの形で受け継いで行ったのではないかと思う。
ところで、実を言うと「amarena」は時々読んでいたのだが、連載の<西洋絵画の秘密>は、よくありがちな有名作品の紹介と思い込み、今まできちんと読んでいなかった(^^;;;。今回の渋いカニャッチで岡田氏の連載と初めて気が付き、あわててバックナンバーをチェックしてしまった。で、ありましたね、カラヴァッジョ《メドゥーサの首》も(笑)
巻頭からパラパラとページをめくっていると、見慣れた(?)バロック絵画が登場。それも渋く、ボローニャ派のグイド・カニャッチ(Guido Cagnacci,1601-1682)《マグダラのマリアの空中浮揚》とは...。女性誌に登場する画家としてはかなりマニアックだ。
解説をよく読むと、何と岡田温司氏による<西洋美術の秘密>と題する連載記事だった。なるほど! なにしろ氏は『マグダラのマリア-エロスとアガペーの聖女』(中央公論新書)の著者でもあるのだから。あ、もちろん『カラヴァッジョ鑑』の編者でもいらっしゃるけど(^^;
グイド・カニャッチ《マグダラのマリアの空中浮揚》(1640年ごろ)
アルテピナコテーク(ミュンヘン)
氏は『マグダラのマリア』の中で、カニャッチのピッティ宮パラティーナ美術館所蔵作品を紹介していたが、今回の掲載ではアルテピナコテーク所蔵作品を紹介している。ということは、カニャッチは同主題作品を2枚描いているということだろうか?
さて、《マグダラのマリアの空中浮揚》は『黄金伝説』に由来するテーマで、プロヴァンスで苦行中に天使の力を借りて浮揚するという神秘体験シーンを描いたもの。岡田氏は、少年のような天使がマグダラに押さえつけられているように見えるところから、後世のファム・ファタールの先取りのようだと述べられている。確かに少年天使は重く苦しそうに抱えている。かなり無理な姿勢を強いられているものね。表情は良く見えないけれど、うむ、マゾっ気のある天使なのかも(笑)
マグダラのマリアは元娼婦だったともされているが、「敬虔にして官能的、純潔にしてふしだら」という両義的イメージを持つマグダラを描くのにカニャッチの右に出る者はいないとのこと。そう言えば、『マグダラのマリア』の中でも官能的な香のするカニャッチ作品が多く紹介されている。
で、思い出したのだが、カポディモンテ美術館で同じボローニャ派のランフランコ(Giovanni Lanfranco, 1582-1647)による同主題作品を観たことがある。ということで、ボローニャ派の浮揚の系譜があるんじゃないか?と思い立ち、好奇心でつい辿ってみた。
ドメニッキーノ(Domenichino 1581-1641)やグイド・レーニ(Guido Reni 1575 - 1642)、更にアンニバレ・カラッチ(Annibale Carraci 1560-1609)まで遡ると、なんだか微妙な影響関係が見えてくるような気がした。もちろんマグダラのマリアの「浮揚」と聖母の「被昇天」は意味的に違うけど、構図的にかなり興味深い。
アンニバレ・カラッチ《聖母被昇天》(1600-01) グイド・レーニ《聖母被昇天》(1642年)
聖ポポロ教会 チェラージ礼拝堂(ローマ) アルテピナコテーク(ミュンヘン)
ドメニッキーノ《マグダラのマリアの空中浮揚》(1620年) ランフランコ《マグダラのマリアの空中浮揚》(1616年)
エルミタージュ美術館(ペテルブルグ) カポディモンテ美術館(ナポリ)
美術ド素人が好奇心のままに並べただけだが、多分アンニバレはティツィアーノのフラーリ《聖母被昇天》を観ているだろうし、カラッチ一族のアカデミーで学び、アンニバレと共に仕事をした画家たちも、何だかの形で受け継いで行ったのではないかと思う。
ところで、実を言うと「amarena」は時々読んでいたのだが、連載の<西洋絵画の秘密>は、よくありがちな有名作品の紹介と思い込み、今まできちんと読んでいなかった(^^;;;。今回の渋いカニャッチで岡田氏の連載と初めて気が付き、あわててバックナンバーをチェックしてしまった。で、ありましたね、カラヴァッジョ《メドゥーサの首》も(笑)