花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

三菱一号館美術館「プラド美術館展」を観た(1)

2015-10-11 16:55:54 | 展覧会

三菱一号館美術館「プラド美術館展」を観た。小作品ならではの味わい深さを堪能できた展覧会である。 

例えば、ヒエロニムス・ボス《愚者の石の除去》にしても、小型作品故に目を近づけ、その繊細緻密な描写を、目を細めながら観る。手前の4人のやり取りやポーズ・表情の面白さもだが、背景の風景描写の美しさや、木々や草むら(麦畑か?)に見える羊たちの白く小さな姿まで、ボスの筆致を楽しむことができる。(ボス作品解説は公式サイトをご参照あれ)

ヒエロニムス・ボス《愚者の石の除去》(1500-10年頃)プラド美術館 

特に茶赤の色彩効果が素晴らしく、胡散臭い外科医のロート状の帽子の下に見える赤 → メスを持つ袖口の赤、太っちょ愚者さんの頭から流れる血色、着ている白シャツの赤糸から赤ズボンへ、そして、白頭巾の愚者奥さんの右袖口の赤 → 頭の上の本の赤茶 → 左袖口の赤 → 腰に下げた赤ポシェットへ…。そのリズミカルともいえる赤の色彩連続さえ愉快だ。ボスの色彩感覚は《快楽の園》でも十分魅了されるが、こんな小品でもネーデルラント絵画らしい写実描写とともに小技を効かせて目を楽しませてくれる。 

実は、ふと思った。Bunkamura「風景画の誕生」展でファクシミリ版が展示されている「時祷書」のミニアチュール画家たちも、その小さな画面に様々な眼を楽しませる仕掛けをしてくれている。光の描写(影があるのだ!)、畑の向こうに見える小川んの水面の輝きや水鳥など、ベリー公だってきっと目を細めながらご満悦で眺めていたに違いない、と…。その写実と細密描写の流れがきっとボスにも通じているのだろうなぁ、と美術ド素人はなんだかそう感じてしまったのだった (^^; 

ランブール兄弟 《ベリー公のいとも豪華なる時祷書》「10月」 (15世紀末) コンデ美術館

プラド美術館を訪れると目がつい有名作品に奪われ、ややもすると控えめな小作品を素通りしてしまう。今回の展覧会が小さな(小型)作品を中心とした構成というのも、だからこそ、観る者が作品との距離を縮めながら、より丹念に子細に愛でることのできる貴重な場なのだと思えた。展示作品がみんな愛らしく新鮮に見えてしまいましたわ♪ 

ということで、続く。だってフォルトゥーニまで行かなくっちゃ(^^ゞ