花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

三菱一号館美術館「プラド美術館展」を観た(3)

2015-10-14 01:51:17 | 展覧会

今回の展覧会で印象的だったのは「ヴェネツィア派としてのエル・グレコ」と「ベラスケス(ヴェラスケス)の白」だった。 

エル・グレコ作品は《エジプトへの逃避》《受胎告知》が出展されていた。特に《受胎告知》の背景には見紛うもなくティントレットの影響が色濃く見られた。

エル・グレコ《受胎告知》(1571-72年)プラド美術館

ティントレット《聖マルコの遺体搬出》(1562-66年)アカデミア美術館(ヴェネツィア)

2012年春のローマ「ティントレット展」でもエル・グレコ作品が展示されている。ヴェネツィア派を代表するティントレットがトスカーナのマニエリスムを吸収したことがよくわかる展覧会だった。今回展示されていた《受胎告知》はエル・グレコがヴェネツィア派の衣を纏いながらも、よりマニエリスム的な幻想性を指向して行く過程を観ることができたと思う。 

 

で、やはりベラスケス作品は2作品とも見応えがあった。ベラスケスと言えばその「黒」の多様性にあるが、今回の展示作品に共通していたのは「白」の際立った使い方だった。 

ベラスケス《フランシスコ・パチェーコ》は師&岳父である画家パチェーコを、威厳を持った個性として、カラヴァッジョ的明暗によりその存在を浮き彫りにしている。特に白の襟襞の筆致は観る者の眼を惹きつけて止まない。

ベラスケス《フランシスコ・パチェーコ》(1619-22年)プラド美術館

《ローマ、ヴィラ・メディチの庭園》は…実はコローを想起してしまった。薄暮の光が木立の緑に灰色のトーンを与えているようで、特に中央に白い布が目印代わりにか垂れ掛けてあり、その白が観る者の目を惹く。更に、左下方の植栽茂みの傍らに点描のように小さな赤い花が咲いているのだ。このニクイ演出は印象派というよりもむしろコローのようではないか??

ベラスケス《ローマ、ヴィラ・メディチの庭園》(1629-30年)プラド美術館

この作品の傍にはクロード・ロラン《浅瀬》が展示されていた。ロランの古典主義的風景と並べることにより、このベラスケスの風景画の異色さが際立つ。バロックとは思えないほど実に現代的なのだ。恐るべし、ベラスケス!でもね、私的にはロランの光と大気も好きなのよね~(^^ゞ