先の記事(モランディの変奏)でちょっと息抜きができたので、「カラヴァッジョ展」感想文に戻ろうと思う(^^;;
図録を読むと、古典的な「五感」の図像を採用していなくとも、カラヴァッジョは知覚というテーマに敏感だった、ということらしい。したがって、カラヴァッジェスキも「五感」に関連した作品を描いた、ということなのだろう。
Ⅱ)風俗画:五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)。
「五感」と言えば新国立美術館にも来ていたクリューニーの《一角獣のタペストリー》が想起される。図録で興味深かったのは、イタリアでは「五感」のような寓意画があまり見られなく、ドイツやオランダに多く見られるということだった(誤読だったらごめんなさい)。ロンバルディア(ミラノ)はイタリアでも北方に近い感覚を持っているのだと思う。アルチンボルドもカラヴァッジョも静物画的嗜好が似ているし、モレッリがプロテスタントだったというのもわかる気がする。あ、もしかして暴走している?(^^;
【触覚】
・カラヴァッジョ《トカゲに噛まれる少年》
薔薇の花が意味する恋愛には思わぬ痛みが潜んでいる、ということなのだろう。トカゲに噛まれた少年(カラヴァッジョ?)は、痛っ!と身をくねらせ涙目なのだが、やはり眼が行くのは静物画を得意とする画家の拘りだ。特にガラス花瓶の描写は眼を奪われてしまう。水の滴、映る光、室内風景!
カラヴァッジョ《トカゲに噛まれる少年》(1596-97年頃)ロベルト・ロンギ財団
同主題でロンドン・ナショナル・ギャラリー作品もある。こちらの方が後に描かれたようだ。ロンギ財団作品の方が色っぽいですな(^^ゞ
カラヴァッジョ《トカゲに噛まれる少年》(1596-97年頃)ロンドン・ナショナル・ギャラリー
ちなみに、《トカゲに噛まれる少年》は「触覚」だけではなく、サクランボなどの「味覚」も、薔薇・ジャスミン(だと思う)の「臭覚」も含まれているんじゃないかと思ったのだが、どうなのだろう??
参考としてだが、2004年のメトロポリタン美術館「リアリティの画家たち」展でソフォニスバ・アングィッソラ《ザリガニに噛まれる少年》を観たが、カラヴァッジョ作品に先行する作品として有名だ。
ソフォニスバ・アングィッソラ《ザリガニに噛まれる少年》(1554年)カポディモンテ美術館
・ピエトロ・パオリーニに帰属《カニに指を挟まれる少年》(1620-25年頃)ランプロンディ画廊
画像が無くて悪いが、カラヴァッジョのトカゲよりも、アングィッソラのザリガニに近いカニに噛まれている。エビが美味しそうだった♪ 「噛まれる少年」はやはりカラヴァッジョの影響だろうなぁと思う。