ボイマンスでこの《バベルの塔》を観た時、あまりにも細密緻密な描写に目を奪われつつ、その朱赤の持つ色調の不穏さが物語の結末を暗示しているのではないかと思った。
サイズ:60 x 75 cm
ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》(1568年)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館
しかし、今回の展覧会で、なんと朱赤が煉瓦の色であり、引き上げに伴う砕片粉末が付着したものだということを知った。多人数の白い人影も漆喰用の白粉を被った者たちだったとは!! だが、ブリューゲルの激リアリズムによる煉瓦色や白であると知っても、やはり暗雲の上に更に高く築かれようとしているバベルの塔は依然として不穏なのである。
ちなみに、解説に拠ると、美術史家でも「いつの日か罰せられる傲慢の象徴とする見方もあれれば、他方には仲違いによって分裂が応じる以前の調和を描いたものとする見方もある」らしい。
私的にはボイマンス作品に先行するウィーン美術史美術館《バベルの塔》(サイズもずっと大きい)の方がなにやら平穏に思えるほどなのだが(^^;
サイズ:114 x 155 cm
ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》(1563年)ウィーン美術史美術館